月が変われば学校が始まる。
就職組の三年生は勝負の時期で、面接練習に追われるのだろう。

教室の雰囲気もきっと慌ただしくなる。

今だって『後悔したくない』という思いで貴重な夏休みを浪費して将来について考えている人もいる。
受験組も宿題がないのに毎日勉強している。

みんな毎日頑張っている。

一方の呑気な私はリビングでテレビを見て時間を潰していた。
全国高校野球も優勝校が決まって、いよいよ夏の終わりも近づく。

何気なく見ているお昼のバラエティ番組の内容も、『秋のイチオシグルメ』だとか、秋物の服を紹介するコーナー。
『ちょっと気が早くない?』なんて私は疑問を抱いていたら、突然チャンネルが変わった。

そのチャンネルは、暗い部屋の中のベッドの上で男女が熱いキスをするドラマ。
それを見た私はふとこの前夏祭りの山村小緑(ヤマムラ コノリ)と男性のやり取りを思い出してしまった。

だから私の顔は自然と真っ赤に染まり上がる。
もうこんな光景、二度と見たくない。

同時に『なんで突然チャンネルが変わったんだろう』と、私は疑問を抱いた。

テレビのリモコンを確認すると、目に映ったのはソファーに横たわりながら、昼間から片手に缶ビールを握る兄の姿だった。
Tシャツに短パンとかなりラフな部屋着姿。

ドラマ鑑賞は兄の趣味だ。

その兄を私は睨み付ける。

「おにーちゃん」

「なんだよ?テレビはそんなつまらなそうに見るものじゃねぇーだろ?」

つまらない?
まあ確かにつまらない番組だった。

でもこんな不適切で変態ふしだらドラマを昼間から見るのは私は間違っていると思うだけ。

休みの日はいつもの昼から缶ビールを開けるのが兄の休日の過ごし方だ。
ちなみに兄が今見ているのは撮り貯めしていた人気のドラマ。

人気の俳優が出演しているだけで人気上昇中のドラマだ。
人気の男優と女優がキスをするだけのシーンを、国民はそんなに見たいのかな?

内容のない薄っぺらいシナリオなのに。

我が桑原家にはテレビは一台しかない。
潔く、このドラマを見たくもない私は、何処かに行った方がいいのだろうか。

でもその前にお腹が空いた。
朝から何も食べてない。