「らしくないよ」
そう投げ捨てるように私は答えると、樹々はまた小さく謝った。
「ごめん茜。でももうちょっとだけ待ってくれない?そうしたらあたしも頑張って話すから」
ここ数日、樹々の様子がおかしいと思っていた。
カフェ会に誘われたときのように後先何も考えずに明るくて、ただ目の前の出来事だけに集中する馬鹿な友達だと思っていたのに。
でも最近はいつもと様子が違う。
まるで何かに脅えているみたいだ。
と言うより今の葵と愛藍に脅える私みたい。
思い当たることと言えば、私が自分の過去を話した後から樹々の様子が変だ。
あの日以来、なぜか樹々は私からすぐに目を逸らす。
そして樹々の笑顔も、いつの間にか薄れていった。
それはまるで、『本当の松川樹々』が顔を出しているように。
と言うか、やっぱり目の前の落ち込んでいる樹々は本当の松川樹々の姿なのかな?
今までの明るい松川樹々は、ただの演技?
でもそれならどうして?
「樹々も何かに悩んでいるの?」
「うん。でも、今は言いたくない」
やっぱりそんなんだと私は樹々から目を逸らして目の前の花火に視線を移す。
そして私なりの慰めの言葉を掛けてみた。
「私は気にしないけど。それに樹々が言っていたじゃん。言いたくないなら言わなくていい』って。私もその通りだと思うし」
「茜、ありがとう。優しいんだね」
やっぱりおかしい。
樹々のそんなセリフ、初めて聞いた。
いつもなら私をからかって、『自分の立ち位置の方が上だ』と、威張るのに。
樹々の口から『ありがとう』なんて、聞いたことない。
「別に。と言うか、樹々の方がどうかしてるよ。さっきの元気はどうしたの?」
「そうかな?」
樹々がいつもと違うから私も調子が狂う。
一つ一つ、樹々を傷つけないように言葉を考えて話す。
その時、また携帯電話のようなバイブ音が聞こえる。
私の携帯電話じゃない。
「あっ、ごめん。ちょっと電話いい?」
「うん」
そう言って樹々は携帯電話を取り出す。
樹々が『トイレに行きたい』と言った理由が、ハッキリわかった気がする。
「もしもし、樹々です。はい、楽しいですよ。そんなことないですって。えっと、友達も一緒ですし。え、向日葵も東雲さんと来てたんですか?瑞季は・・・・ですよね。って明日ですか?そんな、悪いですよ!あたし、まだ杏子さん達になにも返せてないって言うか。もう迷惑はかけたくないですし」
あまり聞いていけない会話だと思って、私は目の前の花火に集中した。
そうしたら花火の音で、隣に座る樹々の声が聞こえなくなった。
そして暫くしたら、樹々は誰かとの会話を終わらせ、携帯電話を自分のバッグに入れた。
そして私を見てまた嘘にしか見えない笑みを見せる。
「ごめん、ごめん!少しお節介な近所の人からだった」
「近所の人?」
疑問を口にしたが樹々は答えてくれなかった。
そして、横目で樹々を見ると、花火を見るその友人の横顔に、涙が溢れていた。
泣いている樹々も、見たことない。
そう投げ捨てるように私は答えると、樹々はまた小さく謝った。
「ごめん茜。でももうちょっとだけ待ってくれない?そうしたらあたしも頑張って話すから」
ここ数日、樹々の様子がおかしいと思っていた。
カフェ会に誘われたときのように後先何も考えずに明るくて、ただ目の前の出来事だけに集中する馬鹿な友達だと思っていたのに。
でも最近はいつもと様子が違う。
まるで何かに脅えているみたいだ。
と言うより今の葵と愛藍に脅える私みたい。
思い当たることと言えば、私が自分の過去を話した後から樹々の様子が変だ。
あの日以来、なぜか樹々は私からすぐに目を逸らす。
そして樹々の笑顔も、いつの間にか薄れていった。
それはまるで、『本当の松川樹々』が顔を出しているように。
と言うか、やっぱり目の前の落ち込んでいる樹々は本当の松川樹々の姿なのかな?
今までの明るい松川樹々は、ただの演技?
でもそれならどうして?
「樹々も何かに悩んでいるの?」
「うん。でも、今は言いたくない」
やっぱりそんなんだと私は樹々から目を逸らして目の前の花火に視線を移す。
そして私なりの慰めの言葉を掛けてみた。
「私は気にしないけど。それに樹々が言っていたじゃん。言いたくないなら言わなくていい』って。私もその通りだと思うし」
「茜、ありがとう。優しいんだね」
やっぱりおかしい。
樹々のそんなセリフ、初めて聞いた。
いつもなら私をからかって、『自分の立ち位置の方が上だ』と、威張るのに。
樹々の口から『ありがとう』なんて、聞いたことない。
「別に。と言うか、樹々の方がどうかしてるよ。さっきの元気はどうしたの?」
「そうかな?」
樹々がいつもと違うから私も調子が狂う。
一つ一つ、樹々を傷つけないように言葉を考えて話す。
その時、また携帯電話のようなバイブ音が聞こえる。
私の携帯電話じゃない。
「あっ、ごめん。ちょっと電話いい?」
「うん」
そう言って樹々は携帯電話を取り出す。
樹々が『トイレに行きたい』と言った理由が、ハッキリわかった気がする。
「もしもし、樹々です。はい、楽しいですよ。そんなことないですって。えっと、友達も一緒ですし。え、向日葵も東雲さんと来てたんですか?瑞季は・・・・ですよね。って明日ですか?そんな、悪いですよ!あたし、まだ杏子さん達になにも返せてないって言うか。もう迷惑はかけたくないですし」
あまり聞いていけない会話だと思って、私は目の前の花火に集中した。
そうしたら花火の音で、隣に座る樹々の声が聞こえなくなった。
そして暫くしたら、樹々は誰かとの会話を終わらせ、携帯電話を自分のバッグに入れた。
そして私を見てまた嘘にしか見えない笑みを見せる。
「ごめん、ごめん!少しお節介な近所の人からだった」
「近所の人?」
疑問を口にしたが樹々は答えてくれなかった。
そして、横目で樹々を見ると、花火を見るその友人の横顔に、涙が溢れていた。
泣いている樹々も、見たことない。