次第に二人は闇の中に消えて、梺まで降りていく。
花火が終わるまでにみんなで花火を見る機会は来るのだろうか。

「いやー、紗季に妹がいたなんて驚いたね。紗季って一人っ子のイメージ強いし」

樹々の言葉に私は少しだけ考えて返す。

「そうかな?お兄さんいたら納得したかも」

「えー紗季のような頭のいい妹いたら、お兄ちゃんグレちゃうよ」

確かにそうかもしれない。
私に何でも出来る年下の家族がいたら、性格が曲がってしまいそうだ。

常に比較されて、自分自身が誰なのか分からなくなりそうだ。

まあでも私の場合は、すでに性格はひん曲がっている気がするけど・・・・・・。

紗季は運動できない分、勉強は完璧に出来ている。

成績は常にトップで、もうちょっと偏差値の高い学校に行けば良かったのにってクラスメイトの女子に言われている光景を見たことあるが、紗季は否定する。

『あまり遠くの学校に通いたくない』って、自分の病気にいて知らないクラスメイトに言っている。

でもその言葉の本心は多分、『遠くの高校に行くと身体が心配だ』って意味なんだろう。
ただでさえ今の生活もギリギリだというのに。

この前の入院も、昼休み中に倒れそうになったのが原因だし。
『夏の暑さにやられた』って、紗季は笑顔で振り返っていたっけ。

みんなのお姉ちゃんのように、誰にでも優しい山村紗季。
どんな状況でも笑顔を振り撒き、誰かを最優先に物事を考える友達想いの優しい女の子。

自分は二の次だ。

そんな中『彼女は幸せなのかな?』と、ふとそんなことを思った。
同時に『私は紗季に迷惑をかけていないのかな?』って思ったりもした。

『本当は紗季、私の事を嫌っているんじゃないかな?』って。

・・・・・・・・。

って、何考えているんだろう私。
そんなことを考えるのは止めよう。

私の悪い癖だ。
常に悪い方へ物事を考える癖。

それで解決するならいいけど、結局自分の首を絞めているだけだ。
誰も得はしない。