二人の待つ場所へ戻ると、案の定紗季は驚いた反応を見せた。
この紗季の様子を見ていると、どうやら姉妹というのは本当らしい。

「小緑!どうしたの?こんなところに」

「お母さんがさきねぇが心配だから見てこいって。ほら、お金も貰ってるから大丈夫」

そう言って小緑はさっきの男性から貰った札を見せびらかす。
どうやら日頃から紗季を欺いているのか、嘘は得意のようだ。

一方の紗季は深いため息。
まだ目の前には沢山の花火が上がっているのに、紗季から子供のような笑顔はいつの間にか消えていた。

どうやら紗季は小緑に笑顔を奪われたみたいだ。
代わりに小緑は紗季と同じ子供のような笑顔を見せている。

そんな紗季は小緑を強引に、私と樹々のいる方へ振り向かせる。

「ほらこっちゃん、挨拶は?」

こっちゃんと呼ばれた小緑は答える。

「山村小緑、十三歳です。よろしくお願いします」

小緑は笑顔を絶やさない。
そしてその笑顔が樹々の心を鷲掴みにする。

「めっちゃ可愛い!笑うと紗季にそっくりだね!」

「そうなんです。めちゃくちゃ言われます。こっちゃん、さきねぇ大好きだから!」

「自分のこと『こっちゃん』ってポイント高いよね!決めた!こっちゃんを持って帰る!ねぇ紗季、いいでしょ?」

「もう、樹々ちゃんってば」

花火大会真っ最中だというのに、彼女らは花火の存在をすっかり忘れているだろう。
花火の音すら消してしまいそうなくらい会話は盛り上がる。

そんな中、小緑は紗季の手を引っ張る。

「さきねぇ、僕何か買いに行きたいからついてきて」

「うん?うん、わかったからちょっと待って!」

強引に紗季の腕を引っ張る小緑の姿に、紗季は困惑。

家でもこんな関係なのだろうか。
だったらいいのだけど。