「お小遣い稼ぎ。中学生じゃアルバイトできないでしょ?って言っても納得しないですよね」

小緑は私をからかっているのだろうか。

もちろん私はそんな理由じゃ納得しない。
自らの体を売って知らない誰からお金を貰うなんて行為は、絶対にあってはならないこと。

何よりまだ中学生。
友達の妹なれば私の心配はより一層大きくなる。

私の無愛想な反応に不満を覚えたのか、小緑は私から目をそらした。
そして小声で呟くように私に言った。

「姉の医療費って言ったら納得しますか?」

紗季がよく見せる辛そうな悲しそうな表情を見せる小緑。
まるで自分の難病に悩むことを告白する紗季に思えて、私は言葉が出てこなかった。

小緑は続ける。

「僕の両親、収入いいけどさ、殆どさきねぇの医療費なんだ。馬鹿みたいに高いし。だから僕の力でさきねぇを救いたいなって」

そんな理由で親は許すのだろうか。
次女に体を売らせてまで長女の医療費を稼ごうとさせているのだろうか。

正直言って、紗季の家庭はよくわからない。
妹の存在も知らなかった私だ。

紗季の家に行ったことはあるが、紗季の家で紗季以外の人間を見たことない。

「まあそんな話はどうでもいいです。さきねぇここに来てるんでしょ?だったらさきねぇの所に行きたいな」

小緑は紗季と表情は似ていても、小緑の中身は全く分からない。
小緑が今何を考えているのか、私には全くわからない。

真夏の暑さの中、あり得ないほど暑い浴衣を来ているのにも関わらず寒気がした。
背筋が凍るような、何か嫌な予感がするような。

「着いてきて」

そう言って私は小緑に背中を向けて歩き出した。姉と会えることが嬉しいのか、小緑は可愛らしい笑みを見せて私の背中を追っていた。

と言うか紗季、なんで今まで小緑のことを話してくれなかったんだろう。

何度か紗季の家に遊びに行ったことがあるが、小緑の姿はなかった。
何か隠しているのだろうか。

そんなことを考えながら私は道を進む。
そして、私の友達に待つ神社へ急いだ。