「まあいいや。ってことで、誰にも言わないでくださいよ。特にさきねぇには絶対」

『さきねぇ』と言う言葉が気になった。
きっと『サキと言う名前のお姉ちゃんがいる』と言う意味なんだろう。

でもそれってまさか・・・・・。

「アンタ名前は?」

「僕ですか?山村小緑(ヤマムラ コノリ)です。中学一年生です」

私の質問に答える少女は笑った。
まるでその笑顔が証明させているかのように、今日まで紗季の見せた笑顔と同じ表情。

一方の私は今日の紗季との会話を思い出していた。

私も初めて知ったが紗季には妹がいると言っていた。
確か自分のことを僕って言うんだっけ。

紗季と同じ苗字の山村。
自分のことを『僕』と呼ぶ女の子。

そして姉のことを『さきねぇ』と呼び、その『さきねぇ』と瓜二つの笑顔。

・・・・・・・。

どうやら目の前の女の子は、山村紗季の妹で間違いないようだ。

確信を得た私は女の子に問い掛ける。

「わざとでしょ。紗季から私のこと聞いていたんでしょ?」

女の子は笑って答える。

「まあね。さきねぇ言ってましたよ。小学生の頃の友人と再会できて嬉しかったって」

そう言って貰えると私も嬉しいけど、気分が晴れないのはどうしてだろう。
言葉が詰まる。

一方の小緑は再び私に笑みを見せる。

「あれ?茜さんは嬉しくないのですか?」

「そんなことない」

「表情がこもってないですよ。まあ、いつも無愛想な茜さんですもんね」

異様な雰囲気を出す小緑は友人の妹とはいえ、苦手なタイプの人間なのかもしれない。小緑と会話すると、私のペースが崩されるし。

「そんなことより、さきねぇには言わないでくださいよ。さっきのこと」

さっきのこと。
それは男性からお金を貰ったことだろう。

援交、『援助交際』だっけ?
だけど『紗季に言うか言わないか』なんて正直どちらでもいい。

それより動機が聞きたい。

「なんでそんなことしているの?」

小緑は笑った。
可愛い笑顔なのだが、何故だか不気味にも見えた。