翌日のホームルーム。担任の黒沼に呼び出された私と葵。
そこで校長先生から飼っていたウサギが亡くなったと知らされていた。

飼育委員として、何か事情を知っているなら教えてほしいとのことだった。

私達は黙秘。
当然だ。

仮に昨日食べさせた花が原因となったら、その責は私達に降り注ぐ。
小さな動物とはいえ、一つの命が私達の責任で失ったと思えば素直に答えるわけがない。

どれだけ重いか分からない責を背負いたいとは思わない。

だから引き続き黙秘を続ける私達だったが、黒沼に追い込まれていく私と葵。

『嘘を答えて逃げよう』とようやく策を思い付いたが、もう遅かった。
何もかも手遅れだった・・・・・。

『あ、茜が。花でも食べさせた方が良いって。だから言われた通り、花を拾って、俺はウサギに花を食べさせた。俺は、茜にやれって言われたからやっただけなんだ!』

震えて絞り出した葵の言葉に間違いはない。
だから私は葵の言葉に反論は出来なかった。

『驚いて何を答えれなかった』と言うのもあるけど、私は葵の言葉を受け入れるしかなかった。
教室に戻ると、冷たい視線が私を襲う。
まるで蜘蛛の巣に捕らえられた哀れな虫。

逃げ場はない。
時間が経てば、なぶられるということだけは嫌でも分かった。

当時の葵はクラスメイトの人気者。
『茜に罪を擦り付けられそうになった』と言えば、クラスメイトは葵の味方をする。

一方の私はどうだろう。
クラスメイトとは殆ど話したことがないし、友人も葵や愛藍の二人だけ。

彼らがいない私は、自分の意思を主張をしない暗い存在。

『不気味な存在』と言えばいいのだろうか。
常に大人しく、感情をあまり見せない桑原茜。

喧嘩も周囲を困らせることも一切していないが、彼らと一緒に居ることによっていつの間にか『問題児のレッテル』を貼られていた。
彼らと一緒に居るだけで、私の評価はどんどん下がっていく。

クラスメイトも『桑原茜の存在が怖い』と言っていたようだし。
だからきっと、みんな私のことが嫌いだったのだろう。

そんな嫌われ者の私は、葵の味方となったクラスメイトの標的になった。
ウサギを殺した犯人、そして葵を貶めようとした最悪の親友として私は攻撃を受けた。

酷いいじめを受けた。

でも彼らは何も間違ってない。
悪いことをした人間は、罪を償うのがこの社会のルールだ。

ウサギを殺した犯人として、私もいじめを受け入れた。

だから辛いや痛いのは当たり前。
私へのいじめはウサギ殺しの私と言う悪を退治する運動だ。

もう一度言うけど、彼らは間違った行動をしていない。

だから私は謝りたい。
彼らに謝って、何もかも終わらせたい。

脅えて過ごすのはもう嫌だし、何よりこれ以上関係ない人を巻き込みたくない。

それが今の私の一番の願いだ。やりたいことだ。

復縁か絶縁は、正直どちらでもいい。

はず・・・・・。