「あはは!やっぱり茜ちゃんって、大人っぽいよね」

「紗季、真面目な話」

「分かってる。彼らは何も悪くない。そしてその事件で謝るのは茜ちゃん。だから『謝りたい』って言った愛藍くんに怒鳴ったの?二は被害者で何も悪くないから」

私は再び小さく頷いた。本当に紗季に頭の中を覗かれているみたい。
その紗季の言葉を聞いた私は、ふと紗季と小学生時代同じ時間を過ごした日々を思い出した。

それは嘘の使い方すら分からない小学生時代。
だから当時の言葉には偽りはなかった。

思ったことをそのまま口にする、嘘の付けない小学生時代の私と紗季。

・・・・・。

だからなのかな?
紗季が私の嘘をすぐ見抜く理由。

あの頃の私と表情が違うから?
今は私の知らない嘘の表情が出ているから?

まあ何にしても、今の紗季には敵わない。
笑顔が似合う、私の優しいお姉ちゃんみたい。

「じゃあ話は簡単じゃん。二人とちゃんと話しようよ。今のことを伝えたら、また仲良くなれるって」

私の本心を突く紗季の言葉に、私は少しだけ嬉しかった。
同時に『今度こそ少しだけでも前に進もう』と思う自分がいる。

友達と一緒に頑張りたいと思う私がいる。

だけどそれを拒む、馬鹿な私もいる。
「でも私、葵の顔を見たら気分悪くなっちゃう。私がまともに話が出来ないよ」

「気分悪くなるって、心当たりとかは?」

「あったら苦労しない」

「愛藍くんと話している時は大丈夫だったの?吐き気とか」

「そういえば、ない」

考えたこともなかった。

そもそもどうして葵と話すときは気分が悪くなるんだろう。
精神的な何かなのだろうか。

愛藍が目の前にいても、話し掛けられても何とも思わないのに。

でもそれについて考えるだけで、吐き気が襲ってくる。
『これ以上考えるな』と言う未来の私からのメッセージなのだろうか。