今日と言う日を改めて思い返してみたら、樹々に振り回されてばっかだ。
突然の呼び出しから、当たり前のように人を待たせるというあり得ない行動。

何様なんだこの金髪娘は。
さっきから私をからかってくるし。
でもそのお陰で私は今、浴衣を着て祭りを楽しんでいる。

これもすべて樹々のおかげなんだろう。
辛い過去から私を救い出してくれたのは、やっぱり樹々だし。

そんな樹々との言い争いの中、時刻は午後八時なった。
そしてなんの始まりの合図もなく、大きな弾けるような音が私の耳を刺激する。

更に視界にはカラフルな明かりが照された。
夜空に輝く七色の綺麗な花。

流石絶景スポットだ。
建物や山に遮られることなく、今日の夏祭りのメインイベントである花火が映る。

だがその絶景スポットというには寂しいほど人はいない。
他の人はと言うと、若い男女のカップルが一組くらい。

そんな綺麗な花火を見ていたら、隣から樹々の声が聞こえた。

「やば、あたしちょっとトイレ行ってくる」

突然樹々は立ち上がり、梺の祭りの会場へと繋がる道へ急いだ。
携帯電話のバイブ音が鳴った音が聞こえたけど、気のせいかな?

「えー今から?樹々ちゃんタイミング悪いよ」

紗季の声は樹々には程遠く、闇の中に消える樹々には聞こえてないだろう。
不満げな表情で紗季は花火を見つめる。

取り残された私と紗季。

聞こえるのは夜空に広がる爆発のような大きな音と、隣から聞こえる紗季の興奮した声。
初めて野外で見る花火に、紗季の表情からは笑顔が絶えない。

まるで小さな子供のような笑顔だ。
何だか可愛らしい。

・・・・・・・。

さて、私はどうしようかな。