祭りの会場のすぐ側に神社がある。
誰も手入れしていないのか、ボロボロで廃墟寸前の小さな神社。

元々のこの祭りの意味は、ここに纏わる神様への感謝の気持ちを形にしたものらしい。

でも時代が変わると共に町の人口は激減。
今や廃墟寸前の神社に、参拝する人なんて殆どいない。

多分ここに神様がいることすら人々は忘れているだろう。
何だか悲しい現実だ。

でもどうやらこの神社こそが、城崎さんのいう『穴場スポット』らしい。

少しだけ山を登ると、海や空が一望出来る高台に辿り着く。
確かにこれなら花火を遮る建物や木々はないだろう。

あまり知られていない場所だからか、人も殆どいない。
本当に花火を見るには最適な場所かもしれない。

「なんだか明るいね。月のせいかな?」

樹々の言葉を聞いた私は空を見上げる。

確かに今日は満月だ。
星の輝きが薄くなるほど、月は輝いている。

まるでさっきの私の心を照らしてくれる樹々達みたい。

でも明かりのない神社が明るいのは梺の屋台や祭りの明かりのおかげだろう。
光のない暗い神社なのに、不思議と明るく感じる。

「そうだね。でも樹々が月なんて言葉使ってる。変なの」

私は意地悪な言葉を使ってみた。
そして樹々は案の定怒り出した。

「ちょ、茜!それどういう意味さ!」

「うるさい」

特に意味なんてない。

でも今日の樹々が気に食わないから私なりの仕返しだ。
まだぶん殴ってもないし。