ルビコン

浴衣なんて着たくは無かったが、流石に汚れた服で過ごすわけにはいけない。
それに恥ずかしいけど、『自分を変えるため』と思ったら着るしかない。

私に似合わない派手で真っ赤な浴衣。
私も樹々と同じで浴衣なんて初めて着た。

でもやっぱり恥ずかしいのが本音だ。
早く着替えたいのが今の私の気持ち。

なんだけど・・・・。

「似合うでしょ?髪も結ってあげようとしたんだけど、頑なに断るから」

「めんどくさいからいいんです」

私は城崎さんの言葉を否定しても、『彼女達』には通用しないだろう。

だって目が合った樹々と城崎さんは一緒に小さく頷いているし。
なんか意気投合しているし。
私不安になってきた・・・・・。

「シロさん、本当は恥ずかしいだけだよ。茜は素直じゃない乙女ちゃんなんだから」

「だよね。私もそう思った!」

ほらね・・・・・・。

私は大きなため息を吐いた。
『最近どこに行っても敵の陣地内』だとつくづく思わされる。

私を狙う敵ばっかで本当に困ったものだ。

いじられることは嫌だとは思わない。
だけど同時に味方もいてほしいのが本音。

だから私は紗季を見た。
『紗季は優しいから、私の味方になってくれないかな?』と思いながら。

って言うか『もう紗季しかいない』と言うような祈る気持ち。

でも何故だろう。
紗季の顔が赤い。

さっきのワサビ入りたこ焼の後遺症なのか分からないが、何故か照れ臭そう。
まるで『初恋の女の子の浴衣姿を見た男の子のような表情』と言ったらいいのだろうか。

とにかく私と目を合わせてくれない。
助けを求める私を無視するかのように。

なんか変な気持ち。
意味わかんない・・・・・。

そんなアウェイな気持ちの中、城崎さんは提案する。