「あたしじゃない」

「僕でもないよ」

樹々と橙磨さんはお互いの顔を見る。
変わった表情を浮かべているわけでもない。

一方の紗季は両手で鼻と口を押さえている。
持病の発作かと不安になりそうだったが、紗季はいつも以上の笑顔を見ている。

どうやらゲームで楽しんでいるだけのようだ。

「なにこれ?えっ、まって!なにこれ!?」

紗季は慌てて予め用意されていた水を飲み干す。
額には汗がびっしょりと浮かんでいた。

その紗季の姿を見て、樹々と橙磨さんは笑っていた。
紗季も落ち着いた頃には再び笑みを浮かべていた。

どうやら彼女達はたこ焼きのロシアンルーレッドで遊んでいたみたいだ。
一つだけワサビ入りのたこ焼きを用意して、みんなで一斉にたこ焼きを食べる。

このメンバーのことだから、ワサビも大量に入れているのだろう。
私は絶対に参加したくない。

というより樹々と紗季、『さっきまであんなに食べていたのによく食べれるな』と私は一人感心。
私はたこ焼きと樹々から貰ったカステラでお腹一杯なのに・・・・・。

でも楽しい時間も管理人さんが来たことで強制終了。
城崎さんはご立腹な表情だ。

「もう、お客さんが来ないからって遊ばない」

城崎さんの声にみんなは一瞬驚いた反応を見せる。
申し訳なさそうな苦笑いを見せる紗季と樹々。

一方の橙磨さんからは本音が聞こえた。

「いやだって全然売れないし。正直言って、お祭りのたこ焼きってみんな飽きてるでしょ?新しいことしていかないと」

その屁理屈にも聞こえる橙磨さんの声に、城崎さんため息を一つ吐いた。

多分自分の事を言われていると感じたのだろう。
さっき『本当は新しい事に挑戦するのが怖い』と、似たような事を言っていたし・・・・・・。

そんな中、樹々は私の変わった姿に気が付いたみたいだ。
目を輝かせて、樹々は私の側にやって来る。

「茜!それシロさんの浴衣?めっちゃかわいい!」

その樹々の大きな声で、紗季や橙磨さんも気が付く。
私の異変に気が付く。