城崎さんの車から外に出ると、再び酷い暑さに包まれた。
ただでさえ暑いのにこんな服を着て、よく樹々や紗季は我慢していたものだ。

「ちょ、城崎さん!これ恥ずかしいですって!」

「いいじゃん。似合ってるから」

「私には似合わないですから」

「大丈夫!茜ちゃん可愛いから」

顔を赤く染める私の背中を、城崎さんは押して前に進んでいく。

目的地はみんなのいる橙磨さんの屋台だ。
さっきから自分で歩くと言っているのだが、城崎さんは聞いてくれない。
『早く今の茜ちゃんの姿をみんなに見せたいから』って。

私は見せたくないのに。
意味わかんない・・・・・。

その私の思いとは裏腹に、目的地に到着。
同時に目的地の屋台から賑やかな声が聞こえた。

お客さんじゃなくて樹々達の明るい声。

「じゃああたしはこれ!」

「えー樹々ちゃんそれ行ったの?じゃあ私は手前の」

「おっ?それ行く?山村さん。多分あたりだよ」

歩く人はいるのに、誰も並んだり止まったりしない寂しい屋台の中。
樹々と紗季、そして橙磨さんはパイプ椅子の上に置かれた三つのたこ焼きを眺めている。

どうやら城崎さんが居ないからか、橙磨さん達は遊んでいるみたいだ。

一人一つずつたこ焼きを爪楊枝で刺す。
そして樹々の合図でみんなはそれを口の中に運んだ。

みんなは私達に気付いていない。

何をしているか分からないが、『ろくでもないことをしている』と言うことはすぐにわかった。
たこ焼きを焼く機材の横に、何故だかワサビが置いてあるし。

だからこれからのみんなの未来は何となく想像はついた。
黙って見ているのが一番分かりやすいし面白いかも。