「私が茜ちゃんに認めてもらいからじゃダメかな?出会ってまだ一カ月も経っていない人が『何言ってんの』って思うかもしれないけど、世の中には心の底のから信用できる人だっているの。例えば樹々ちゃんとか紗季ちゃんとか、橙磨くんのようにね。だからまずは私で心を開く練習。茜ちゃんの心の扉は固すぎるし、まだ樹々ちゃん達にも本当の自分を見せてないんだし」

城崎さんの言葉に頭が痛くなる。
『私はまだ友達に心を開いていなかったの?』って思ったから。

と言うか友達に心を開いてなくて、それで友達?
それちょっとおかしいよね。樹々が聞いたらまた怒るよね?

「どう?茜ちゃんやる?やらないと茜ちゃんをカフェ出入り禁止にするかも」

出禁か・・・それはやだな・・・・。
せっかく見つけた私の居場所なのに。

・・・・・・。

今日まで七年間の間、自分の中では努力はしたつもりだった。

でも周りから私を見たら、きっと笑われるだろう。
『逃げるための努力をしていたのか?』って、思われるだろう。

きっと葵も愛藍も、今の私を見て笑っているのだろう。

そんな駄目な私に手を差し出してくれる人がいる。
一人で考え続ける私に、正しい道を教えてくれる人がいる。

いつも一人で考えていた私だから、何もかも曖昧だった。
でも誰かと一緒なら、もう迷う必要なんてないのかな?

明日に胸を張れる自分が現れるのかな?

だったら誰かと一緒に頑張るのも一つの方法かもしれない。
と言うか、一人じゃ何も出来ないし。

だったら、誰かと一緒に前を向いて歩いてみよう。

今の私には、頼れる仲間がいる。
「はい。お願いします」

小さな声だけど、私は答えた。
もう今の私に断る理由なんてないし。

変わりたい自分がここにいるし。

「そうこなくっちゃ。明日は自分で作らないとね。『誰かに作って貰った明日』はしんどいでしょ?」

城崎さんは私が今まで見たことのない強気の表情を見せてくれた。
まるで過去の自分を押し殺すように、新しい自分を見つけるかのように。

そして最後は笑う城崎さん。
優しい笑顔じゃなくて、性格の悪い時に現れる不気味な笑顔。

って、え?

・・・・なんで?

「じゃあ、まずワンステップ。今着ている服を全部脱げ!」

「はい?」

私は首を傾げた。
ってか意味わかんない。

城崎さんは続ける。

「中身も大事だけど、まずは外見から。そんなんじゃ舐められるわよ!」

いつの間にか半開きになっていたドアの車内で、城崎さんは叫んだ。
そして私の悲鳴は、その半開きになったドアを越えて夜空に消えて行く。

って、・・・・・はい?