「いや、無茶です!無理です」

その無茶な罰ゲームに、私の表情が初めて歪んだ。
一方でその私の表情を見た城崎さんは笑っていた。

「なんで?でもお仕置きとか罰ゲームって、そういうものでしょ?恐怖とか最悪な状況を背中に乗せないと人は頑張らないし。だから、私が約束を破ったら店を閉める。これでどう?」

店を閉める?

・・・・え?

平然な表情で城崎さんはとんでもない発言をするが、手は少しだけ震えているようにも見えた。
自分が何を言っているのか、自問自答しているのだろう。

でもこの人は本気だ。
何より冗談でもそんなことを言えるわけないし。

まばたきが一つない城崎さんの真剣な眼差しが、それを物語っているし。

私は息を呑んだ。
そんな重大な罰ゲームを用意するほどの、約束という名前のゲーム。

ゲームの内容もかなり難しいのだろう。
それにこの人なら、何を言い出すか分からないし。

分からないからこそ、私は心の準備をする。

・・・・・。

けど、その心の準備は無意味だった。

城崎さんが言うゲーム内容に、私はただただ唖然。
「そのゲームとは、毎日私と茜ちゃんの二人で五分だけでもお話をすること」

そう言って、城崎さんは再び私に優しい笑みを見せてくれる。
まるで、『これなら簡単でしょ?』とでも言うように。

一方の私は考えすぎて理解出来なかった。
難しいゲームだと思ったのに、簡単過ぎる内容に私の頭の中は混乱する。

「えっと?」

「何?もっと複雑なのがよかった?『これから毎日、城崎美憂とお話しましょう』って内容なのに。それにただ二人で話す時間を増やそうと思っただけよ。店に来なくてもいいし、電話でも何でもいいからさ」

そう言った城崎さんは財布から名刺を取り出すと、それを私に渡した。
城崎さんの携帯電話の番号と、メールアドレスが書かれた名刺を・・・・。

・・・・・。

やっぱり城崎さん、本気で私のことを考えているようだ。
じゃなきゃ、わざわざこんなゲームなんて考えないし。

そもそもこんなことを言える時点で『本気』だと思うし。

一方の私は自分の無力さに気が付いた。
そこまで城崎さんがしてくれないと『自分が変われない』とわかった事実に・・・・。

「どうして、そこまでしてくれるんですか?」

私の言葉に、城崎さんは笑みを見せて答える。