屋台にいる城崎さんに服の相談したら、城崎さんの車に着替えがあるみたいだ。
だから私は城崎さんと一緒に、近くの駐車場に停めてある城崎さんの車へ向かう。

城崎さんの愛車である大きな白い車の中は、綺麗な車内だった。
大きな荷物も何も乗って無いし散らかってはない。

でも鼻が捻れそうな煙草の匂いで臭かった。
家内で煙草を吸う人がいない私には、煙草の臭いはとてもキツく感じる。

その車内に入ると、私が浮かない顔を浮かべている理由を城崎さんが問い掛けてくる。

「どうしたの？元気ないけど」

「いえ、あの 」

「何かあったんでしょ？」

私は隣に座る城崎さんから目を逸らす。
そういえば前に樹々から『都合が悪くなると目を逸らす癖がある』と指摘されたんだった。

城崎さんも気づいているんだろうか。

ここで黙っていても、私の気分は晴れないだろう。

言いたくない訳ではないが、心の準備が必要だった。
じゃないとまた吐き気と頭痛に襲われる。

一方で城崎さんはあまり店では見せない表情だ。
眉間にシワを寄せて、心配そうに私を見ている。

まあでもさっきまで元気だった子が、いきなり『世界の終わり』のような暗い表情を浮かべていたら、気になるのが普通だよね。

でもその表情もあっという間。
すぐに城崎さんはいつもの笑顔に戻る。

「大丈夫。何でも話してごらん。私は茜ちゃんの味方だから。樹々ちゃんも紗季ちゃんも心配しているし。絶対に力になるから」

城崎さんの優しい言葉に私は頷く。
また励まされる。

確かに黙っていても話は絶対に進まない。
だから私は心の中で一つ深呼吸すると、覚悟を決める。

・・・・・。