近くの分かれ道には樹々と紗季が立ち止まっていた。
そして二人は私の元へ駆け寄ってくれる。

「もう心配したよ。急に消えちゃうから。どこ行ってたの?」

樹々の問いかけに私は戸惑う。
戸惑う理由なんてないのに。

「いや、その、転けちゃって」

なんで私、樹々から目を逸らすんだろう。
どうして二人の顔を見れないんだろう。

助けてもらってどうして私は素直になれないんだろう。

そういえば今まで彼女達に一度もお礼を言えていない。

「茜ちゃん。服、泥だらけ」

「え?」

その紗季の言葉に、私は改めて自分の姿を確認。
そして落ち込んだ。

私が着る泥がついた白いパーカーTシャツは、兄から貰った大切な服。
二年前の誕生日プレゼントで貰った服で、私のお気に入りの服だ。

と言うか大好きな服だというのに最悪だ。
何て言って兄に謝ろう。

そんな落ち込む私を見て、樹々が提案してくれる。

「シロさんに相談してみよ。着替えあるかもしれないし」

浮かない顔で私は前を歩く二人の後を追う。

でもまたさっきと同じように、彼女達の背中を追いかけていたハズなのに、いつの間にか背中を押されていた。

そして『もう離さない』と言わんばかりに、樹々と紗季は私の手を握ってくれていた。
私、まるで迷子の子供みたい。

そんな二人は、二度と妹がはぐれないように手を繋ごうとするお姉ちゃんのよう。

そして妹を励まそうと、二人は笑顔を見せてくれて、『もう大丈夫だよ』や『カステラ食べる?』なんて優しい言葉を掛けてくれた。

当たり前のように助けられたと思ったら、なんだか悔しくて涙が出そうだった。

迷惑ばっかりかけて、本当に申し訳ない・・・・・。

こうして私達は城崎さんがいると思われる橙磨さんの屋台へ向かった。
手を繋いだまま三人でしっかり前向いて歩いた・・・・。