だけどその中で、一つだけ疑問が生まれた。
紗季に聞きたいことがある。

その疑問を紗季にぶつけようと思ったが、私の代わりに橙磨さんが聞いてくれる。

「へぇ山村さんに妹いるんだね。なんか意外」

確かに以外だ。
と言うか私は紗季とは小学生からの付き合いだけど、紗季の妹の存在を今初めて知った。

私も紗季の妹の姿は見たことないし。
何より紗季の口から『私の妹』という言葉を初めて聞いた気がする。

そんな紗季は照れくさそうに『妹』について答えてくれる。

「う、うん。今年中学生になったんだけど、全然私の言うこと聞いてくれなくて。まだ十二歳なのに大人っぽいと言うか、ひねくれていると言うか。でもちょっと変わっているかな。あぁ!もちろん可愛いんだよ。男になりたいのか、自分のこと『僕』なんて言っちゃってるし」

「へぇー。いつか会いたいね。山村さんと同じで勉強が得意だったりするのかな?」

そう言った橙磨さんは焼きたてのたこ焼を容器に入れると、ソースとマヨネーズをかける。
最後に丁寧に鰹節や青海苔までトッピング。

そしてそれを紗季に渡すと、自らの財布から五百円を取りだしレジ代わりの金庫に入れた。

ってか橙磨さん?
なにをしているのだろう?

「でもなんか意外だね。クラスで一番信用されて、学級委員長も任されている。おまけに校内で一番勉強出来るのにたこ焼きを食べたことないって」

白い湯気の立つ美味しそうなたこ焼きを渡された紗季は戸惑っていた。
トッピングの鰹節は踊っているようにも見える。

「えっと、これは?」

紗季の言葉に橙磨さんは笑顔で答える。

「僕の奢り。山村さんが『たこ焼き食ったことない』って言うし。お腹が減ってるのか、桑原さんがたこ焼きに釘付けだし」

『そんなことない』と言い返したい所だが、確かにお腹が空いている。
今思えば朝から何も食べていないし。

だから私は顔を赤く染めて橙磨さんから目を逸らす。
自分の行動を振り返ったら、なんだか凄く恥ずかしい。

確かに紗季の妹の話を聞いている時も私、たこ焼きをずっと見ていたし。

「あ、ありがとうございます。いただきます」

私の声に、橙磨さんはまた優しく笑う。
本当に子供のような無邪気な笑顔だ。

ずっと眠り続ける妹さんも、同じような顔なんだろうか?