「杏子さ・・・・、し、シロさんに染めてもらったんだ。『夏休みだから大丈夫』って」

そういえば城崎さんも似たような色だ。
もしかして城崎さんに憧れているのかな?

「あっ樹々ちゃん。って可愛い!すっごい似合ってる!」

ゲームをしていた紗季がようやく樹々の存在に気づいた。
かなり熱心にやっていたため、全く気づかなかったんだろう。

一方の樹々は紗季の言葉に自信が生まれたのか、調子に乗ったことを言ってくる。
悪い魔女のような不気味な表情を浮かべている。

「でしょ?やっぱり紗季は素直でいいよね!シロさんも似合ってるって言ってるし。誰かさんはトンチカンなこと言ってくるし」

樹々と目が合う。
『トンチカン』と言う言葉が気に入らないから、私は反論する。

「正直で思ったことを言っただけ。何が悪いのさ」

「茜は心が狭いね。だから友達が出来ないんだよ。それに遊ぶなら本気で遊ばないと。生きていても楽しくないよ。なんのために生まれてきたの?遊ぶ為でしょ?」

そうだ、このバカを殴らないと。
あまりいい手段ではないが、暴力で黙らせるのも一つの手。

「まあまあ、二人とも」

でも紗季が隣にいると思うように手が出せないのが現実。
『帰り道、樹々と二人になった時が勝負だ』と、私は作りかけた拳を引いた。

全員揃った私達は樹々を先頭に歩き出す。
向かったのは駅のホームだ。

どうやら夏祭りの会場は電車で揺られた先らしい。

樹々と紗季は浴衣。
一方で私は兄のお下がりの白のTシャツにジーパンと、ラフなスタイルだ。『こんな格好でいいのだろうか』と、疑問に思いながら私達は電車で目的地へと向かった。