今から六年前の出来事だ。

小中学生向けの小物道具屋さんで紗季は青のポーチかピンクのポーチか決められず、ずっと目の前のポーチとにらめっこしていたっけ。

でも結局、紗季は選択を私に任せた。
『茜ちゃん、私にとってどっちの色がいいかな?』って。

私から見たら正直どっちでもよかった。
だから『紗季ならどっちでも似合うよ』と適当に指を指した先が、紫色のポーチだったらしい・・・・・。

らしいと言うのは、正直私自身がそんな出来事は覚えてないから。
ポーチを選んだ記憶は覚えていないけど、紗季の嬉しそうな表情は覚えている。

何故だかそれだけはしっかりと覚えている。

ただそれだけのお話。

夏休みに入っても紗季は元気だった。
再び入院することなく、夏の猛暑にも負けず、家で大人しくしているみたいだ。

家で受験勉強でもしているのかと思ったが、どうやら違うみたい。
家では全く勉強をしていないみたいだ。
紗季の進路は進学。
私や樹々と違って紗季には将来の夢があるらしく、『保育士』になりたいそうだ。

そのために専門学校に進むらしい。
受付の早い専門学校だから、もう内定を貰っているとか。

・・・・・・・・。

なんか腹立つ。

でも『保育士』って過激な仕事だと聞いたことがある。
そんな過激な仕事に、身体の弱い紗季は大丈夫なのだろうか。

応援したい気持ちもあるがその反面、『保育士にならないでほしい』と思う私もいる。身体の事を思って欲しいと思う自分がいる。

もちろん本人には私の気持ちは伝えてない。
他人が人の夢にどうこう言うのは間違っていると思うし、紗季が選んだ道だから応援しなきゃって思うし。

そんな紗季はゲームが大好き。
携帯ゲーム機を常に持ち歩いて、暇さえあればいつも遊んでいる。

体がろくに動かせない中でも見つけた幸せなんだろう。
入院中はずっとゲームをしていると言っていた。

『ゲームが自分の支えだ』とも言っていた。

だから夏休み中は家でずっとゲームをしているらしい。
朝から晩までずっと、『夏休みは友達と遊ぶかゲームしかしていない』って聞くし。

・・・・・・。

やっぱり腹立つ。