「どうしたの？」

「あっ、茜？今大丈夫？ってか暇？」

一瞬だけ考えたが、家に居てもピアノを弾くだけ。

「うん、暇と言ったら暇」

「夏祭り行こうよ！」

その一年ぶりに聞く言葉に、私は困惑。

『今日は毎年行われる地元の夏祭りの日なのか？』と思ったが違う。
地元の夏祭りは来週だ。

「バカ、寝ぼけてるの？夏祭りは来週だよ」

「そういうと思った」

その言葉を聞いた私は腹が立った。
どうやら樹々は私をバカにしているらしい。

「どういうこと？ってか樹々、私に喧嘩売っているよね？」

「知りたかったら今から駅前に来て！もちろん浴衣でも大丈夫だから！」

樹々はその謎のメッセージを残して、通話が切れた。
同時に私は『一体樹々は何を考えているの？』って思った。

無音になった自室で私は立ち上がる。
そしてクローゼットの中を確認するも、目当てのものは見つからない。

浴衣なんてお洒落なものを探してもあるわけがなかった。
と言うか私、そもそも浴衣なんて着たことがない。

諦めた私は部屋着から私服に着替える。
兄から貰った大きめの白いパーカーTシャツにジーパン。

そして玄関に向かうと、最近よく履いている夏用のサンダルを履いた。
お洒落なんて興味のない私に『こんな格好でいいのか？』と疑問に思いながら私は家を出た。