ルビコン

「でも茜、『過去のことは気にしてない』って言いながら、昨日は泣いていたよね?」

私の表情が歪んだ。
恥ずかしさも混み上がってくる。

と言うかそんなこと言われても知らない。
いや・・・・、実際は樹々の言う通りだけど。

実は昨夜、全て吐き出した私は泣いてしまった。
安心したのか、もう悩まなくていいのか、それは分からない。

不思議と涙が止まらない。

だけど悲しさの涙じゃない。
嬉しさの涙だと言うことは、直ぐに分かった。

『もう一人じゃない』って。そう思ってしまったから泣いたのだろう。

『大切な、大好きな友達がいる』ってことに・・・・。

でも今日の私はそれを否定する。
正直言って、例え友達の前でも涙を見せたくない。

「昨日のことなんて覚えてない。だから私は泣いてない」

一方の樹々は不気味な笑みを見せた。
小さな脳をフル回転して、私の揚げ足を取るのがいつもの樹々のスタイルだ。

憎たらしい所もあるが、それが松川樹々という私の友達だ。

そんな親友がが私は大好きだった。

屁理屈を言い合う最高の仲だ。
訳のわからないことを議論して、いつの間にか喧嘩。

ホントに最高な仲間。
いつの間にか目的のクレープ屋さんに着いた。
仲良く二人で喧嘩しながら、何するか選んでいく。

『茜のクレープはあたしのもの。だから茜にクレープを選ぶ権利はない』とかホントに意味わかんないし。

結局私が選んだクレープもかじってくるし・・・・・。

ばか。

でもどうやら今日もいつもと変わらない、楽しい一日が始まりそうだ。

それだけで、私は幸せになれた気がする・・・・・。

前に進めた気がする。