テーブルはすでに殆ど埋っている。
このカフェ会の意味は、『知らない人と相席で仲良くしましょう』という意味なのだが、私にとってはやっぱり嫌な予感しかしない。

早く帰りたいのが私の本音。

だけどその中でも行動するのが、『松川樹々』という破天荒な女の子だ。
相手構わず誰にでも声をかけるその姿に脱帽。

それに『なんで私と正反対な性格なのに、仲良くしているんだろう』と、いつも疑問に思う。

そんな樹々は席を見つけたのか、私に向かって手を振っている。

共にいるのは私服姿の女性二人。
大学生くらいだろうか。

「茜、一昨年の卒業生で元吹奏楽部の先輩だよ」

私はその席に向かうと、樹々に強引に腕を引っ張られて座らされた。
私が逃げれないように、奥の席に座らされる。

同時に目の前の綺麗な女の人と目が合う。

「君がもしかして噂のピアノちゃん?私は美空(ミソラ)。そして、こっちは桜(サクラ)」

脅える私を、眼鏡をかけた美空と言う人が舐め回すように見ている。

まるで今から狼に食べられる、ウサギのような気分だ。
悪い人じゃないと信じたいけど、人見知りの激しい私はただただ目の前の綺麗なお姉さんが怖い。

そんな私を助けてくれる女の人もいる。

「こら美空。茜ちゃんが怖がってるでしょ?ごめんね」

申し訳なさそうに、私に平謝りする彼女が桜さんと言う女性みたいだ。
大学生というのに、中学生にも見える童顔が印象的だった。

と言うか体も小さいからか、大学生に見えない。

こちらも悪い人じゃないと思うけど、やっぱり知らない人が恐いと思う自分がいる。

正直言って、『早く帰りたい』と思う気持ちが強くなった。
人には不向きという言葉があるし。