三人揃ったことで、私達はショッピングモールの中を歩き出す。
目的地のクレープ屋さんに向かう。

私は紗季と昨日の音楽祭の話題を話していた。
でも私から音楽祭について話す内容がなったから、いつの間にか愛藍の話題。

そして私の過去の話題になっていた。

と言うかそもそもその音楽祭、『何をやっていたんだ?』って来たかれたら、『大好きな曲をイヤホンで聞いていた』って私は答えるし。
自分の演奏も一瞬で、あんまり覚えてないのが本音だし・・・・。

だから自然と愛藍や過去の話になったけど、不思議と辛さはなかった。
過去を思い出すとやって来る吐き気や頭痛、手の震えもなかった。

やっぱり昨夜の一件で何が吹っ切れたのかな?

同時に今の私、何だが不思議な気分だ。
何だか私、少しだけ生き生きとしているかも。

こんなの初めだ。

でもやっぱり完全に克服したわけではなく、心の底ではまだ少しの恐怖。
葵や愛藍の顔を見たら、またいつもの元の私に戻ってしまうんだろう。

まあでも、その場面に樹々や紗季や橙磨さんが居てくれたら話は別かな?

今の私には、友達がいるんだし。

そんな悠長な事を考える私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
それは今まで落ち込んでいた樹々の声。

「茜、ごめん。気付かなくて」

勇気を振り絞ったら出てきた、非常に小さな樹々の声。
聞き取るかのがやっとの小ささ。

そんな声を聞いた私はどうして樹々が謝っているのか考える。

でも思い付かない。

「なんのこと?」

樹々は再び小さな声で答える。