翌日。
真夏の蝉の鳴き声と、溶けてしまいそうな蒸し暑い陽気が私を襲う。

時刻は午後二時。
気温は本日の最高気温だから、本当に溶けてしまいそうだ。

なんか生きているだけで嫌になっちゃう。

でもその反面、今日と言う日が楽しみな私もいる。

城崎さんの提案で、『みんなで遊びに行ってらっしゃい』だってさ。
どこで手に入れたか知らないけど、近くのショッピングモールのクレープのタダ券を貰ったし。

だから私は待ち合わせ場所である、ショッピングモールに来ていた。
夏休みだから人は多く、子供達が多い。

昨日の音楽祭みたいに、子供達の賑やかな声があちこちから聞こえてくる。

そんなショッピングモールの正面玄関で今日のメンツを待っていたら、樹々がやって来た。

昨夜彼女の身に何があったのか分からないが、樹々の髪色はいつもの茶色に戻っていた。
帰ってからまた染めたのだろうか。

そんな彼女に私は笑みを見せる。

「樹々、昨日はありがとう。何だかんだで楽しかったし」

私の言葉に樹々は曖昧に頷く。
そして私から目を逸らす。

樹々の表情は暗かった。
理由はきっと、私の過去を知ってしまったからだろう。

私の話を不安げに聞いていた樹々の表情を、私はしっかり覚えている。
まるで自分のことのように樹々は頷いていた。

確かに私も橙磨さんの過去を知ったときは動揺した。
まだちゃんと話を聞いた訳じゃないけど、『その辛さを抱えながら生きている』って思ったら、他人の過去でも自然と自分を重ねていた。

『そんなの私なら耐えれない』って。

だからなんで樹々が今落ち込んでいたのか、何となくだけど分かる気がする。
樹々が辛い顔を浮かべる気持ちも理解出来る。

だけど、そんなことで樹々が悩んでほしくない。
それが今の樹々への私の想いだ。

また元気な笑顔を私に見せて欲しい。