階段を下り始める。衣鶴の背中に、先程水薙の言っていた言葉をかけた。

「水薙は衣鶴くんのこと、戦友だって言ってた」

確かにあそこは戦場だった。
苦く笑った衣鶴が、そちらを見上げる。

「水薙のいる場所なら、どんな地獄でも楽しそうだと思ったから、一緒に居る」

どんな戦場を見てきたのだろう、と宇賀は思った。
でも衣鶴は階段を下り始めていた。

その背中は尋ねるには遠く、呼び止めるには近すぎた。

「まいっか」とポケットに手を入れて、教室へ戻る。


衣鶴は、戦友のいる場所へと向かった。











20200224