バイクの最高速度に比べたら、こんなのは可愛いものだ。

「水薙」

上から言葉が降ってくる。勿論上を向く。
噂をすれば影。衣鶴が二階の窓から顔を出していた。

「もう昼、食べ終えた?」
「いまさっき」
「まじか。レポートまだ書き終わらねえんだけど」
「あっそ」

隣で宇賀がクスクス笑う。「この距離でする会話?」と肩を震わせている。
あたしに言われても困るんだけど。

上を見ると、衣鶴の姿はもうない。

「留学行くとめっちゃレポート書かないといけないらしいね」

弁当箱をしまいながら、宇賀が言った。