衣鶴の首に掴まる。下りて歩くと言いたいところだけれど、全身痛くて堪らない。

「向こうの学校見てこようと思って、留学したんだ」

見上げなくても、空に星がないことは分かっていた。
それは明らかなことだったから、確かめるまでもない。

「知らない言語じゃないけど、向こうで一人でいたとき、前に鯨の話したろ。覚えてる?」
「ちょっとだけ」
「あの鯨の気分だった」

孤独な鯨。誰にその声は届くのか。

「でも俺はお前がいたから、孤独じゃなかった」

そうか。あたしたちは既に出会っていたらしい。
唯一無二に。