衣鶴の方を向いて尋ねる。

「僕も水薙の家に行ったことありますけど、階段の急さに驚きました」
「……わかった。じゃあ気をつけてね、階段に」

担任が立ち上がろうとしたのを見て、あたしは息を吸う。

「先生、あたし三月一杯で学校辞めます」

ぱっと衣鶴の顔がこちらに向いたのが分かった。

「どうして?」
「勉強が嫌になりました」
「高校は卒業しておいた方が良いと思うけど」
「今度書類とかを貰いに行きます」

立ち上がって、先に教室を出る。
すぐそれを衣鶴が追いかけてきた。

肩を掴まれる。振り払うと、衣鶴はすぐに離れる。