あの街にいた頃、あたしは無知でそれを知らなかった。
橋を渡る。少し歩くと、そう大きくはないガレージが見えた。
シャッターを開けると少し焦げ臭い。
どこから持ってきたのか分からない椅子がいくつか並んでいて、それぞれに小学生くらいの子が座っている。全部の目がこちらを向いた。
「水薙さん、こんにちは!」
「……ここに来るなって言ったのに」
「今日は学校早めに終わっちゃったんです。だから皆で来ようって」
六年生の蓮実が明確に返事をする。他三名はその会話を聞いていた。
蓮実の弟、三年生の昭人。五年生の茉理と周平。