それだけ見て、頭の中の少ない引き出しを引っ張ることなく、答える。

「もう忘れた」






HRが終わって、クラスメートが続々と教室から出て行く。
あたしも例に漏れず、教室を出た。
いつもは廊下で友人と話している衣鶴の姿はない。

「衣鶴なら留学のなんかで職員室呼ばれてた」

その友人があたしに気付いて教えてくれる。お礼を言って、昇降口へと向かった。

部活へ行くクラスメート数人と挨拶をして学校を出る。駅の向こうのバス停でバスを待った。

この街の西側へと人を運ぶバスに乗る人は、殆どいない。学生はゼロだ。
使うのはあたしと、衣鶴くらい。