それからも二人で話していたら、気がついた頃には学校に着いていた。
歩いて十五分の道も、海ちゃんと一緒ならあっという間。

見ると嫌な気分になる校門の存在も、いつの間にか通り越している。

そしてそれは、海ちゃんも私と同じことを思ったみたい。

「なんか誰かと話して登校したら、一瞬で学校に着いちゃうね」

「うん。そうかも」

「空ちゃんは今日午後の『選択科目』、なんだっけ?」

選択科目。
私達の学校では学期ごとに好きな授業が選べる総合学科だ。

ジャンルは色々あって、自分の好きな科目を選べることができる。
現代文や理数系や地理や歴史の座学や、球技や学校以外の施設を利用したスポーツ科。

他にも調理科や福祉科や美術科など様々な授業がある。
結構珍しい高校。

「私は、調理だよ。海ちゃんは?」

「私も調理!確か今日はハンバーグだったよね?スッゴく楽しみ!」

午後からの選択科目の授業に、海ちゃんは笑みを見せた。
ホント私と違ってよく笑う子だといつも思わされる。

「海ちゃん、食べるの好きだもんね。この前のお寿司もずっと食べていたし」

「だって美味しかったんだもん。空ちゃんのお父さんと誠也さんが握ってくれるお寿司は最高」

「それは言えるかも」

魚の血は大嫌いだけど、魚のお寿司は大好きな私。
お寿司ならずっと食べられるし。

やっぱり私もお父さんや誠也さんみたいにお寿司屋になろうかな。
近くに凄い人がいるし。

私自身もお母さんと一緒に晩御飯を作っていたし、多少は料理に自信があるし。

そんなことを少し考えていたが、次の海ちゃんの意地悪な言葉に私は焦り出す。

「空ちゃん、誠也さんのこと、狙っているもんね」

「ちょ!いきなり何さ!」

海ちゃんは笑った。
誠也さんと少し似た、私をからかうだけの笑顔。

海ちゃんはその笑顔を私に見せたまま続ける・・・・。

「私、知っているもんね。この前の空ちゃん、ずっと横目でお寿司を握る誠也さんを見ていたこと」

はい・・・?

え?