「私、血がダメなんだ。魚とかの血がダメなの。下手すりゃ気絶しちゃう」

この前のお店を手伝った日曜日、誠也さんに呼び出されたと思ったら、魚の血が染まった真っ赤なまな板を見せられたのは、記憶に新しい。

そしてそのあと誠也さんを本気で怒ったのは、ある意味いい思い出だ。
魚と同じで、『誠也さんの頭を落としてやろう』かと思ったし。

そんな私の弱点に、海ちゃんは唖然としていた。
ちょっと意外だったかなのかな？

「ありゃりゃ。それは致命的だね。空ちゃんがお寿司屋を営業したら、卵専門店のお寿司屋になりそう」

「あはは・・・。確かに。絶対にお客さん来てくれないね」

でも将来の夢がないなら、お父さんと一緒に仕事をするのも一つありかもしれない。

お父さんも最近疲れているし。
武瑠が亡くなって、かなりショックを受けているし。

私もお父さんを支えたいし。

それからも海ちゃんと楽しく話して登校する私達。
海ちゃんが全て話題を振ってくれるから、私も話しやすい。

そんな私達の隣に自転車に乗る男の子が現れた。
大きな体の、昨日『友達』になった高林孝太くん。

「うっす！今日はぼっち登校じゃねぇんだな」

ぼっち登校。
一瞬私に言っているのかと思ったが、何故だか海ちゃんが反応する。

そして『ぼっち』と言う言葉が気に入らなかったのか、海ちゃんは怒りを露にする。

「うるさいな！早く朝練行け！」

「はいはい」

器用に片手で自転車を運転しながら、私達に手を振る孝太くん。

そしてその『朝練』と言う言葉に追われているのか、彼は風のように猛スピードで走っていった。

ちょっぴり豪快な孝太くん。

と言うより朝練ってなんだろう？

「朝練って？」

私の質問に海ちゃんは答えてくれる。

「孝太くん、一応バスケ部の部員だから。実は昨日も部活あったみたいだけど、あんまり先輩達とうまくやっていないみたい。よくサボっているし」

「そ、そうなんだ」

あまり仕入れたくない情報だったと、私は少し後悔。

まあでも人間関係って難しいもんね。
私なんか人間関係滅茶苦茶だし・・・・・。