お母さんは『急性心筋梗塞』と言う、冠動脈内に血栓が突然作られ、心筋に血液が届かなくなる病気だった。
人生をどん底に叩きつける最悪な病気。

その病気のせいで、私のお母さんは突然この世を去った。

何の前触れもなく、私の前からお母さんは姿を消した。

当然、私の誕生日パーティーは開かれることはなかった。

置き去りになったお母さんの料理も、結局手を付けることはなかった。
食べられなくなって、結局全部捨てたっけ。

そしてお母さんが亡くなってから、私は酷く悲しんだ。
『もうお母さんは帰ってこない』って知ってからずっと泣いていた。

武瑠も私同様にずっと泣いていて、お父さんから離れることはなかった。
お父さんとおばあちゃんも、ずっと悲しんでいた・・・・。

何より、さっきまで笑顔を見せていたお母さんが急に亡くなって、本当に辛かった。
これからみんな、私の誕生日を祝う未来しか想像していなかったから尚更・・・・。

だから振り返ってみたら、本当に辛かった十歳の誕生日だったっけ。
大好きなお母さんが亡くなった、『最悪の私の十歳の誕生日』だったと改めて思う。

同時に始まる、とても辛い私の十代の人生。
ただただ絶望に包まれる、私の光のない人生。

・・・・・。

そういえばその日だったっけ。
私が『自分に対して自信を持てなくなった日』って。

『もう少し早く運ばれたら、お母さんは助かったかもしれない』

それはお母さんを見てくれた病院の先生が言った一言。
先生として、何も間違っていない言葉。

でも、何でもないただの一言が、今の私を苦しませる。

・・・・・。

その言葉の言い方を変えたら、私がお母さんを殺したようなもの。

その病院の先生の言葉が本当だったら、私がすぐに救急車を呼んでいれば、お母さんは助かったかもしれない。
私に『知恵』があれば、お母さんを救えたかもしれないのに・・・・・。

・・・・・・・。

だからその時の私、泣くの同時にスッゴく自分を責めた。
『私がお母さんを守れなかった』って、ずっと悔やんでいた。

『全部私が悪い』って。

『私はお母さんを殺してしまった悪者なんだ』って。

その『事実』はもう変えることは出来ない。

・・・・・。

やっぱり私って、人を不幸に追いやる『悪魔』なのかな?

私と一緒にいる人間、みんな『不幸』になっちゃうのかな?

お父さんも誠也さんも海ちゃんも、みんな同じ目に会っちゃうのかな?

・・・・・・・。

もしそれがそうなったら私、今度こそ耐えられないよ。

悪魔のような私、生きていても意味ないよ。

・・・・・・・・・。

もういっそ、誰か私を殺してくれないかな・・・・?