「空ちゃんはもっと前向いていいと思う。『北條達を見捨てた』ってみんなは言うけど、私はそうは思わない。だって現に私達を助けてくれたじゃん。詳しくは知らないけど、きっとあの時は北條達って分からなかったから助けなかったんでしょ?」

見事に当てられて、私は小さく頷く。
海ちゃんにはその時の話は一切してないのに。

海ちゃんは私にまた笑みを見せてくれる。

「だったらもっと胸張って生きていこうよ!と言うか、暴行されている二人が悪いんだし。暴行されている経緯を空ちゃんに話していない時点で、『空ちゃんが悪い』とは言い切れないと思うし。そもそも自分達が反省したら、空ちゃんが悪いなんて思わないはずだし」

海ちゃんの言葉に、私は思わず海ちゃんから目を逸らした。
彼女の真っ直ぐすぎる言葉に、ネジ曲がった私の心はついていけない。

でも海ちゃんをよく知る孝太くんは小さく笑う。

「なんか海らしいな」

「当たり前でしょ?私、間違ったことはしてないと思うから」

間違ったことはしてない、か。
そんな言葉、いつかは弱気の私も使ってみたい。

だけど強い気の持ち主の海ちゃんにも間違いがあったのか、突然私に頭を下げる。

突然謝り出す海ちゃん。

「でもごめん、空ちゃん」

私は目を疑った。
単に頭を下げる海ちゃんが信じられないと思ったから。

「海ちゃん?なんで謝るの?」

「だって私、空ちゃんが北條達にいじめられている時、助けてあげられなかったし。いつも見て見ぬふりしてたから、その・・・ごめんなさい」

そして海ちゃんに続いて孝太くんも頭を下げ始める。

「それを言うなら俺もごめん。海と一緒でいつも知らない顔してたし 。俺には関係ないって思っていたから・・・・」

私は目の前で頭を下げる二人に、脳をフル回転させて私は言葉を考える。
二人を傷付けない言葉を考えたけど・・・・。

「えっと、大丈夫だよ。何て言うかあんまり気にしなかったし。一人の方が良かったし。」

二人が謝っているのに、その言葉ないだろうと言って後悔。
こんなときこそ素直にならないといけないのに。

だから私は慌てて言葉を付け足す。
素直な私らしくない言葉。