「あー、ごめんね!あの子不器用なだけだから。じゃ、ばいばーい」

小坂さんは私達に笑顔を見せると、友達である北條さんの後を追った。

でもどこか不安げな、小坂さんの小さな背中。
まるで『今が苦しい』とでも言うような小坂さんの横顔。

そして最後に小坂さんはあり得ないことを呟く。

今の私には理解できない言葉・・・・・。

「そらちゃん、ごめん」

それは小さく聞こえた小坂さんの声。
聞き間違えたかと思ったけど、それは紛れもなく小坂さんの声。

もちろん私は驚く。

「・・・・えっ?」

でも考えている時間もあっという間。

孝太くんが私の元へ駆け寄る。

「おい美柳、大丈夫か?」

北條さんに蹴られたりしたから体は痛む。
正直言って大丈夫じゃない。

孝太くんの手を借りて立ち上がるのも、一苦労。

「う、うん。一応。結構痛むけど」

そう私は答えたが、今はそんなことはどうでもいい。

今どうしても海ちゃんに聞きたいことがある。

「海ちゃん、なんで助けてくれたの?」

喧嘩を終えて腰を抜かす海ちゃんは首を傾げた。
まるで『馬鹿げた質問だ』と言うような、海ちゃんの意地悪な優しい表情。

「だってこの前空ちゃんが私を助けてくれたじゃん。そのお返し・・・って言ったらなんか変だよね?あはは!」

そういえば私、すっかり忘れていたけど、海ちゃんを助けようとしたんだっけ。
私、知らない男の人から人から海ちゃん守ろうとしたんだっけ。

まあ結果的に何も出来なくて、私も酷い目にあったけど・・・・。
海ちゃんを助けたのは私のお父さんだったし。

そうやって過去を振り返っていたら、海ちゃんは優しいアドバイスをしてくれた。

今の私を励ましてくれる。