「弟さんが亡くなったって、空ちゃんのお父さんから聞いたよ。燐ちゃんや花音ちゃんにいじめられているから、さらに辛いと思うけど」

その松井先生の言葉を聞いて、『この人は一体どこまで私のことを知っているんだろう？』と私は思った。
さっき松井先生が言った『噂通り』と言う言葉にも気になるし、誰から聞いたんだろう。

少し聞いてみよう・・・・。

「私がいじめられていること、松井先生は知っているんですね」

「もちろん。担任としてクラスメイトの関係くらいは把握しておかないとね。『一人も欠けずにみんなで進学卒業する』って言うのがあたしの目標だし。仲良くしてもらわないと困るんだよね」

松井先生は一度私の暗い表情を確認すると続ける。

担任の先生として、現状の問題について話してくれる・・・・。

「実は私から二人には話をしているんだ。でも燐ちゃんも花音ちゃんも全く話を聞いてくれないのが正直な現状。クラスメイトも協力的じゃないし、ずっと二人を監視するわけにもいかないし。困ったものだ。どうしようか？空ちゃん」

「どうしようかって言われましても・・・・えっと」

突然振られて戸惑う私だけど、私の問題だから一応考えてみた。

だけど、知恵がない私は何も良い案が思い付かない私。
考えようとしてみるも、何から考えたらいいのかわからないし、どうしたらいいのか分からない。

完全にお手上げな状態・・・・・・。
でも自分のことなのに、あんまり人任せはよくないよね。

松井先生は私の担任の先生だ。
『自分のクラスでいじめが起きている』って知ってから、松井先生はいじめられている私に協力的。

教師として、仕事として、私を助けているのだろう。
私も一人の味方として、松井先生を信じたい。

でも松井先生にこんな余計な仕事を作ってしまったのは、私が原因。
私がしっかりしてなかったから、こんなことになっちゃったし。

松井先生も本来はこんな仕事をやりたくないと思うし。
私達生徒の笑顔が見たいだけなのに・・・・・・・。

・・・・・・。

だったら私が何とかしないと。
自分で巻いた種だったら、自分で処理しないと。

放置したり逃げてばっかじゃ、もしかしたら他の人がひどい目に会うかもしれないし。

何より、もし仮に『他の人が私のせいで嫌な思いをしてしまった』って思ったら私、それこそ耐えれないし。絶対に嫌だし・・・・。

・・・・・。　

だったら、私がしっかりしないと。

でもやっぱり、具体的に何をしたら良いのかわからない私。

どう解決したらいいのか分からない。
やっぱり直接二人に謝った方がいいのだろうか。
だって私達、元々仲良かったし。

二人と話し合えば、また元通りの関係になれるかもしれないし。

いじめは終わるかもしれないし。

・・・・・・。

でも今の私に出来るのかな、そんな難しいこと。
今の私、二人の顔は怖くて見れないし・・・・・。

そんなことを一人で考えていたら、松井先生に心配されていた。

真剣だけど、どこか温もりのある松井先生の表情。
なんだか誠也さんが見せる表情に似ている。