私は自分の涙を拭った。
正直言ってまだ笑顔は見せれないけど、少しは気持ち的に前には進めたともう。

だから私はもう一度確認する。
現実を確認する。

「武瑠は、もういないんですよね」

誠也さんは笑顔で答える。

「武瑠くんはずっと空ちゃんのことを見守ってくれるよ。ずっと空ちゃんを見守ってくれているよ。上手く言えないけど、そんな気がする」

誠也さんは今、私を励まそうとしてくれる。

そう理解したら、何だかその言葉が面白く感じた。
何故だか不思議と元気が出てくる。

私も誰かさんと同じで性格が悪い。

「そんな気がするって、ちょっといい加減ですね」

私の言葉に、誠也さんは笑う。

「あはは。俺、どうも人を励ますのは苦手でね。いっつも真奈美に『お兄ちゃんはもっと上手に慰めて』って、落ち込む真奈美に怒られた事があるくらいだし」

誠也さんの言葉を聞いた私は、いつの間にか悲しさか半減になって顔を上げる。

そして、ようやく小さく笑う。

「落ち込む真奈美さんに怒られるって、なんか変ですね」

「だろ?『わざと落ち込んで俺を試しているんじゃないか?』って、不思議に思わされるしよ。アイツもアイツで性格の悪い奴だし。ってか俺の回りは性格の悪い奴ばっかだからよ。真奈美に裕香に千尋。あと将大さんに空ちゃんも」

誠也さんの言う様々な名前の中、私の名前が上がっていることに気が付いた。

もちろん私は反論する。

「わ、私はそんなに悪くないですよ!」

「そうかな?俺と関わった人間みんな性格が悪くなっていくからな。あと一年くらい経てば、空ちゃんも立派な性悪の女王様だ。あー、怖い怖い」

「ちょっと意味がわからないです」

誠也さんがまた『私をからかっている』と言うことは理解した。

そう言えば、まだこの『性悪大魔王』をボコボコしてなかったっけ。
私との約束、まだ残っているし。

何にしようかな?
やっぱり後で私の気が済むまでフルボッコに殴ってやろうか。

・・・・・。

うん、それがいい。
私に逆らえないように、ボコボコにしてやるんだから。

そうやって誠也さんと話していたら、不思議と元気が出た。
そう言えば、今日は何度も不安な所を誠也さんに助けられたっけ。

誠也さんといると、不思議と『私も頑張らなきゃ』って思わされる。
性格が悪い誠也さんにバカにされるから、私も『やってやる!』って気持ちになる。

改めて思うと、本当に誠也さんは『変な人』だと私は少しだけ思った。

そしてそんな誠也さんに、後で『ありがとう』って伝えよう。
今日私が笑えたのは、間違いなく誠也さんのおかげ。

ずっと私の側にいてくれたおかげで、私は笑えた。
人生を楽しめた。

こんな楽しい一日、改めて思うと『最高』だった。
色褪せることのない最高の思い出。

いつの間にか、今日の記憶を取り戻していく私。

楽しい思い出が胸にいっぱい。

一生、忘れることはないだろう。