「そんなの、私には出来きないよ・・・・」

そう言ったりしたら、『いい加減怒られる』かと思ったりもした。
二人の言葉を、私のワガママで蹴飛ばす。

そしてそんな私にカミナリが落ちるのかと、一瞬そんなことを思ったけど・・・・・。

お父さんはずっと笑っている。
まるで、私に『こうやって笑うのだよ』って教えてくれてるみたいに。

「ははは!まっ、空にはまだ難しいか。確かに武瑠が亡くなってすっごく悲しいもんな。お前の気持ちはすっごく分かるし、家族を失う気持ちを俺も理解しているから空の気持ちはすごく分かる。だから、無理なら無理でもいい。笑えなかったら笑わなくてもいい。お前には俺らが付いているから、たくさん泣いて、辛い気持ちが消えてから笑ってくれたらいい。無理して笑うと、人間逆に辛いからな。俺も経験あるし」

無理に笑うな。
今の気持ちを整理してから笑え。

そう理解した私は涙をふき取ると、小さく頷いた。

そして少し考える。

今私を励ましてくれるみんなの気持ちについて、少し考えてみる・・・・。

・・・・・・・。

武瑠が亡くなって、私は辛い。
涙が止まらない。

でもそれは『みんなも同じなんじゃないかな?』って少し思ったりもした。

お父さんにとっては大切な息子。
おばあちゃんにとっては大切な孫。

誠也さんにとって武瑠は、大切な友達のような存在。
誠也さんと武瑠はすっごく仲が良かったし、よく遊んでいたし。

だからそう思ったら、『私だけが泣いているのは少し違うかな?』って思ったりもした。

確かに辛いし、涙も自然と出てしまうけど、みんなも武瑠の死に悲しんでいるんだ。
本当はみんな、私同様に泣きたいはずなのに、『私だけが泣くのは違うかな』って。

というか、武瑠は私に『笑え』って言っているんだ。
私と約束したんだ。

『ずっとお姉ちゃんは笑っていて欲しい」って。

・・・・・・・・・・。

そう考えたら、もう泣いていられないよね。
って、さっき誠也さんが言っていたのに、どうして私は理解しようとしなかったのだろう。

誠也さんは『武瑠はお姉ちゃんの泣き顔なんて見たくない』って言って励ましてくれたのに。

お父さんも『私が笑ったら、武瑠も笑ってくれる』って言ってくれたのに。

・・・・・・。

相変わらずバカだな私は。
どうも人の気持ちを理解する事が出来ない。

武瑠はよく私の気持ちを考えてくれたのに。

お姉ちゃん失格だ。
そんなんじゃ天国の武瑠に笑われる。

・・・・・・・・・・。

だったら早く武瑠に認めてもらわないと。

もう泣き虫な自分は嫌だ。

ってか、武瑠に怒られるよ。
夢に出てきて、また怒られるよ。

それだけはなんとしても避けないと。

何より私、『しっかりしたお姉ちゃんになる』って武瑠が生まれた時に誓ったんだし。
武瑠も赤ちゃんの時にその私の言葉を聞いているはずだし。

だから、私がしっかりしないと。
本当に武瑠に笑われる。

そしてもっと自信を持たないと。
前に進まないと。

こんな私は、私も嫌だ。