「お父さん、どういう・・・・こと？」

お父さんの言葉を自分で確めるべく、私は不安な気持ちを抱いて急いで武瑠のベットに向かう。

・・・・・。

するとそこには可愛らしく眠る武瑠の姿あった。
武瑠の額に私は手を触れてみると、まるで氷のように冷たい。

同時に目の前の武瑠の帰らぬ姿に、私は混乱していく。

「・・・武瑠？えっ、武瑠？」

お父さんは私の肩を一度叩くと、私に現状を教えてくれる。

受け入れたくない『現実』を私に教えてくれる。

「残念だが空、昼頃に武瑠は亡くなった。武瑠はもう目を覚ますことは二度とない」

冷静で分かりやすいお父さんの言葉に、私は更に混乱するだけ。

同時にお父さんを睨み付ける私。

「うそ・・・・でしょ？ねぇ！お父さん！」

お父さんは何も答えてくれなかった。
血相変える私の表情から、目を逸らすだけ。

と言うか武瑠が死んだ？
いや、それだけは絶対に信じたくない。

だって昨日私と話していたじゃん！
武瑠、私のことを守ってくれるって言ってくれたじゃん！

確かに武瑠は『末期のガン』と宣告されていた。
余命も延びることなく、『自分にに残された時間は約一ヶ月』と武瑠は昨日も言っていた。

ってか昨日の段階で『一ヶ月』と言っていたのに、なんで『翌日』に亡くなっちゃうの？


本当に理解出来ない。

・・・・・。

いや、理解したくない。
絶対に武瑠が死んだなんて理解したくない。

だから私は再び武瑠の元で叫び続ける。

大声で武瑠の名前を呼び続ける。

「武瑠！私だよ空だよ、お姉ちゃんだよ！起きてよ！武瑠！」

「空、よしなさい」

おばあちゃんに止められても私はやめない。
病院だと言うことを忘れて、ただただ武瑠の名前を呼ぶだけ。

「武瑠！たける！」

でも何度弟の名前を呼んでも結果は同じだ。

武瑠から返事は返ってこない。
氷や石のように、ピクリとも動いたりしない。

だから今の私に残された選択肢は、大好きな弟が目の前から居なくなったと言う現実を受け入れることだけ。

どんなに足掻いても、武瑠は目を覚ますことはないから、私は武瑠の死を受け入れなきゃならない。

・・・・・・。

でもそんなの出来ないよ。

私、武瑠がいなきゃ生きていけないよ。

「たける！」