正直言って、私は今の現状を全く理解出来なかった。

だって夜の時間といえば、お父さんはお寿司屋さんの営業の時間。
もちろんお父さんはお客さんのために、お寿司を握るために、いつもの『板場』と言うポジションに立っているはずだ。

なのに、この時間にここにいるって、少し変な話。

それにおばあちゃんもそうだ。
お父さん同様に、お寿司やさんの白衣を着るおばあちゃんもここにいる。

昨日は『私のために誠也さんの代わりにお店で働く』って言っていたおばあちゃんなのに。

・・・・・。

・・・・どうして?

なんでみんなここにいるの?

ってか、武瑠は?

武瑠はどこに行ったの?

ねえどこにいるの?

武瑠。

そんなことを思っていたら、誠也さんの申し訳なさそうな謝る声が聞こえた。
後から病室に入ってきた誠也さんは、何故だかお父さんに頭を下げている。

「すいません、将大さん・・・・。俺、空ちゃんに本当のこと言えませんでした」

本当のこと。
その言葉の意味が気になったが、お父さんはようやく笑う。

まるで緊張の糸がほどけたかのように、私を見て優しく微笑む。