気が付いた頃には時刻は午後七時を回っていた。
誠也さんの好きなバントの曲を聴きながら、夜の道を走って行く。

茜色の空も、いつの間にか真っ黒な夜空に変わっていた。
金色に輝くような綺麗な月や幾千の星達も顔を出している。

何だか今日はとっても輝いて見えるのは気のせいかな?

そんな綺麗な暗闇の空を車の助手席から眺めていたら、間もなく目的地である病院に着いた。
面会時間は午後の八時までだから、ちょっと急がないと武瑠と話す時間が無くなる。

今日はいっぱい話したい事があるのに。

だから私達はすぐに車を駐車場に止めると、すぐに降りる。
遊園地で買った武瑠へのお土産を両手に抱えて、武瑠の元へ急ぐ。

お土産とは、遊園地のマスコットキャラクターのぬいぐるみ。
少し武瑠に似た、カエルをモチーフにしたキャラクターだ。

これにした理由は、ただただ可愛かったから。
武瑠の気持ちを考えずに、私の『可愛い』という一言で買ってしまった。

でも武瑠に少し似ているし、まあいっか。
可愛かったなんでもいいと思っているし。

ちなみに近くにお父さんの車が止まっているけど、武瑠の笑顔が脳裏にいっぱい広がっているから、今の私は全然気にしない。

その時はどうでもいいと思っていた私・・・・。

あまり人のいない病院のロビーや少し不気味な暗い廊下を小走りで駆け抜け、私は武瑠の病室のある三階へ私は急ぐ。

誠也さんは何故だか不安な表情を見せているけど、今の私は大好きな弟と会える喜びかでいっぱいだから、あまり気にならない。

そして武瑠の病室に辿り着くと、昨日同様にノックをせずに病室の扉を開ける。

同時に大好きな弟の名前を呼ぶ。

「たける!」

そう私が言えばいつも武瑠が『ノックして!』とか言って怒ってきたり、驚いた表情を私に見せてくれる。

私も少し申し訳ない気持ちになるんだけど・・・・。

今日はいつも違う。

何故だかお父さんの声。

「おう、空。今日は楽しかったか?」

武瑠の病室の中には、何故だか仕事着の白衣を来たお父さんとおばあちゃんの姿。
二人とも武瑠のベットの近くで、誠也さんと同じ暗い表情を見せている。

武瑠の姿は二人が邪魔をして見えない。
ベッドにいるのかすら今の私にはわからない。

ってか、なんでお父さんとおばあちゃんがここにいるの?

え、なんで?

どうしてここに?

・・・・・。