気が付けば空は茜色に染まっていていた。
最近日が落ちるのが早いと凄く感じるし、かなり冷えて来たと私は実感。

もう冬だ。

遊園地の閉館時間はまだまだだけど、私は誠也さんと一緒に遊園地を後にした。
そのまま誠也さんの車のある駐車場へ向かう私達。

遊び疲れたのが今の私の本音だ。
お腹も空いたし、早く帰ってお父さんの作る晩ご飯が食べたい。

今日の晩ご飯は何だろう。

でも晩ご飯の前に、弟の武瑠に会いたい。
ここずっと毎日二人で目を見て話すのが、私と武瑠の欠かせない『日課』になっているし、今日も面会時間ギリギリまで沢山話したい。

そして武瑠に今日楽しかったことを共有したい。
武瑠にも笑顔になって欲しいし、今の私の気持ちを聞いて欲しいし。

そんな未来を考えながら、私は誠也さんに笑顔を見せる。

「今日はスッゴく楽しかったです!」

誠也さんも笑ってくれる。

「そう?よかった」

駐車場に停めてある誠也さんの車を見つけると、私達は誠也さんの車に乗る。
誠也さんは運転席に座り、車のエンジンを掛けるとポケットから携帯電話を確認。

一方の私も助手席に座り、シートベルトを装着して車が発信するのを待つ。
誠也さんがアクセルを踏むのを待つ。

でも中々車は発信しない。
誠也さんはずっと難しそうな表情で携帯電話を見つめている。

そういえばサメのアトラクションの前も同じ顔を誠也さんは見せていたっけ。
あの時も誠也さん、携帯電話を眺めていたっけ。

誰かと連絡取っているのだろうか?

そんなことを考えていたら、誠也さんに名前を呼ばれた。

ちょっと暗い誠也さんの声。

「ねぇ、空ちゃん」

「なんですか?」

誠也さんはどこか悲しげな表情を私に見せていた。
まるで私にとんでもない辛い隠し事をしているかのような、誠也さんの見たことない辛そうな表情。

でもそれは私の思い違い。
誠也さんはすぐに私に笑顔を見せてくれる。

「いや。なんでもないよ」

「そうですか?」

誠也さんがそう言うなら仕方ない。
私が考えても何も分からないし。

何事もなかったかのように、シートベルトを装着した誠也さんはアクセルを踏むと車は動き出した。

こうして私達は遊園地を後にする。
思い出をいっぱい抱えながら、私達は笑顔でこの場を後にする。

次に向かうのは武瑠の病院だ。