だけど、その時間はあまり長くなかった。

まだ目の前の巨大過ぎるサメは消えてないのに、突然誠也さん銃口を下げる。

「どうやら時間切れみたいだね」

「えっ?」

誠也さんの言葉通りだった。
目の前の巨大なサメは海の中に消えることなく、私達に近付いてくる。

そして巨大なサメの体は私達の船にぶつかり、船は激しく大きく揺れた。

同時に、大きな水しぶきが私達を襲う。

「きゃっ!」

冷たい水は大きく跳ねて、まるでシャワーのように私達の元に降ってきた。
完全に濡れた訳じゃないけど、私のお気に入りの服のあちこちは水で濡れてしまった。

被っていたニット帽も服もスカートも濡れている。

そしてそんな無様な私を見て、誠也さんは笑い出す。

「あはは!空ちゃんびしょびしょになっちゃったね」

そういえばこのアトラクション、サメを倒せなかったら水しぶきが襲ってきて濡れてしまうんだっけ。
激しく濡れる場合があるって、アトラクションの注意事項にも書いてあるし。

まあでも、それなら濡れるのは仕方ない。
サメを倒せなかったから、濡れるのは当たり前の話。

でも気に入らない所は一つある。
どうしても許せないところがある。

「なんで誠也さんは濡れてないんですか?」

隣に座る誠也さんには水滴は一つも飛んでいなかった。
誠也さんの服や髪は一切濡れていない。

それに『空ちゃんだけ濡れてかわいそうだね』とでも言う誠也さんの笑顔が心底ムカつく。

また私に『挑発』してくるから本当にムカつく。

「それは、何でだろうね?このアトラクションが空ちゃんのことが嫌いだからじゃない?」

「また変なこと言わないでください!」

銃口を向けても意味ないと分かった今、私は誠也さんを狙って拳を降り下ろす。
『このバカを一回本気で分からせないといけない』と思いながら、誠也さんを襲う私。

「ちょ、ごめんごめん!でもこれに関しては俺も分かんないよ。たまたまとしか言いようがないよ」

「納得いきません!」

誠也さんは襲い掛かる凶暴な私の拳をキャッチして、 ずっと私を見て嘲笑っている。
『そんな攻撃、俺には通用しないよ』とでも言うようなふざけた誠也さんの顔面。

本当にムカつく!

いつの間にか黒い雲は晴れて青い空か戻っていた。
同時にアトラクションも終わり、私達を乗せた船も止まる。

でも私は船から降りず、苛立ちが収まらないから諦めずに誠也さんに襲い掛かっていた。
係員の人、中々降りない私に呆れていたっけ・・・・。

一応勝負は『私の勝ち』となったから、誠也さんは私をジェットコースターに連れていくことを断念。

そして私の強い希望でパレードを見て楽しんだ。
華麗に舞うように踊る人が何だかカッコいい。

他にも誠也さんと一緒に様々なアトラクションを楽しんだ。
綺麗な光のイルミネーションを見て楽しむアトラクションや、立体映像を楽しむアトラクションにも乗った。

殆ど私が希望するアトラクションばっかだから、『誠也さんは楽しめているのかな? 』って不安になったけど、誠也さんは私を見てずっと優しく微笑んでくれた。

誠也さんいわく、『空ちゃんが笑顔だと俺も嬉しい』とか。

私もそう言ってくれると、不思議と嬉しい・・・・。