「思った通り空ちゃんも脅えていたから、俺はそれで満足だよ。可愛らしく涙なんかも見せてさ。これでジェットコースターに乗る理由もなくなった」

その言葉を、時間を掛けて理解する私は答える。

「・・・・つまり誠也さんは、私の脅える顔を見たくて、ここに誘ったのですか?」

「そういうこと。なんか文句ある?」

文句なら山ほどある。
でも口で言っても私の怒りは収まらないから、苛立ちの表情と共に目の前の銃口を誠也さんに向ける。

これに実弾が入っているなら迷いなく目の前の悪魔を乱れ撃ちたいけど、残念ながらアトラクションの銃には実弾は入っていない。
ただのおもちゃの銃。

だから誠也さんも余裕をぶっこいて笑っている。

「あはは!銃で俺を撃っても意味ないよ。でも冗談でも人に銃口を向けたらダメだよ?空ちゃん」

「うるさいです!誠也さんのバカ!」

「あはは!って、笑っている場合じゃなかった」

「えっ?」

突然誠也さんは自分の銃を構える。当時に目の前に向かって何度も撃っている。
一方の私も首を傾げながら、誠也さんの銃口の先を確認。

するとそこには、今までに見たことのない大きさの巨大なサメが目の前にいた。
まるで巨大なクジラのようなあり得ない大きさのサメ。

多分、このアトラクションのラスボスなんだろう。
弱点となる的は強敵らしくあちこちに移動をしている。

口の中や目や背ビレなど、一定時間ごとに動いている。

と言うかいつの間に居たんだろう。
誠也さんも私も全く気が付かなかった。

そういえば『黒い雲』もまだ晴れていなかったし。

でもそんなことを考えている場合じゃない。
また脅えていないで、今度は自分の力で何とかしないと。

誠也さんも応援してくれる。

「一度くらいは自分で戦ってみたら?腕試しってやつ」

「あっ、はい!」

怖くない。
そう自分に言い聞かせて、私は銃口を誠也さんからサメに向ける。

私は誠也さん程、銃を扱う腕前は上手くない。
誠也さんのように連射なんて出来ない。

だからゆっくりだけど、銃を握って目の前の巨大過ぎるサメを撃ってみるが、中々思い通りにはいかない。
全く急所となる的に当たらず、迎撃ポイントも私一人じゃうまく稼げない。

でもそれでも私は諦めなかった。
さっき誠也さんに教わった銃の扱い方を思い出しながら、目の前の怖い敵に立ち向かう。

『一人でも出来るんだ』って証明するように、真剣な眼差しで戦っていく。

『私が私の未来を創るんだ』って、頑張ろうとする自分に言い聞かせる・・・・・。