「はい、しっかり握って」

いつの間にか私の手は勝手に誠也さんに動かされ、そのまま目の前の銃を握らされた。

同時に誠也さんは銃を握る私の手の上から包み込むように私と同じ銃を握ると、目の前の巨大サメに銃口を向けて的確に撃ってくれた。

気がつけば、私の銃で誠也さんは一緒に戦ってくれる・・・・・。

そして笑みを見せて、私を元気にしてくれる誠也さん。

この人はどこまでも、『私の味方』だ。

「嫌なことがあったり、敵が現れたら戦ったらいいのに。相変わらず変な空ちゃん」

誠也さんの言葉に、その通りだと感じた。

『逃げること』しか頭にないから、『すぐに脅えて現実から目を逸らしてしまう』だと私と改めて思った。
誠也さん言う通り、戦えば何とかなるかもしれないのに。

・・・・・。

でも私にはそれすら出来ない。

本当に怖いものには、やっぱり逃げることしか選択肢が残されていない。
戦うなことなんて私には出来ないし。

どうやって戦ったらいいのか分からないし・・・・。

そんな私の心を読んで、誠也さんは私に笑顔を見せてくれる。

「まあでも空ちゃんは優しいからね。かつての信じていた友達に仕返しなんて、空ちゃんには出来ないよね」

誠也さんは続ける。

「それにあの二人、初めての空ちゃんの『友達』だっけ?」

私は小さく頷いた。
その間も、誠也さんは私の銃で一緒に戦ってくれる。

「うん」

「そっか」

目の前の巨大サメを倒したのか、巨大サメは海の中に消えていった。
第一ステージをクリアしたからか、私達を乗せた船はゆっくり進んで次のステージへ向かっていく。

そしてその間も、誠也さんは私を励ましてくる。
ちょっぴり性格の悪い誠也さんらしい言葉を交えながら。

「とりあえず今は目の前の出来事に集中しよ。一人で前向くことが出来ないなら、誰かと一緒なら出来るかもしれないし。俺でよければ、空ちゃんと一緒に戦うよ。何より俺は、空ちゃんのこう言う落ち込んだ顔は見たくないからね。笑顔の空ちゃんか、俺にやりたい放題されて悔し泣きする空ちゃんの顔以外は、あまり見たくない」

性格の悪い誠也さんの言葉の後、すぐに新たな巨大なサメが現れた。

今度は二匹。
今度の的は口の中ではなく巨大な背ヒレの所だ。

「ほら、今度は空ちゃんが撃ってみてよ。大丈夫。空ちゃんはやれば出来る子なんだからさ」

やれば出来る子。
そういえばその言葉昔からお父さんによく言われていたっけ。

小学生の時のテストや、何かの結果が上手くいかなかった時は、お父さんはいつも励ましてくれたっけ。

『大丈夫だ。そんなに落ち込むな。空はやれば出来る子なんだから、また次頑張れば必ずいい結果がやって来る。必ずな』って・・・。

きっと誠也さんも、お父さんに何度もその言葉を受けて、お寿司屋さんの修行をしているのだろう。
今の誠也さん、何だかお父さんに似ている気がするし。

スゴく頼りになるし。

・・・・・・。