「じゃあこうしよう。今から俺とゲームして、空ちゃんが勝ったらジェットコースターはなし。でも空ちゃんが負けたら大人しくジェットコースターに乗ること。この公約で勝負しようよ」

誠也さんは意地でも私をジェットコースターに乗らせたいのは、私も理解した。
きっとここには私の知らない楽しいアトラクションがあるのだと伝えたいのだろう。

でもそもそも私は『ジェットコースターなんかに乗りたくない』と、くどいほど誠也さんに伝えている。

と言うか、なんでこうなっちゃうんだろ・・・・。

「私、高所恐怖症なんで・・・・。本当に無理なんで」

「それ、高所恐怖癖じゃないの?人間誰しも高い所から落ちる恐怖が隣にあると、恐怖に陥るからね」

その誠也さんの言葉は、過去に私も調べたことがあるから知っている。

単に高い場所が苦手な人は、『高所恐怖症』ではなく『高所恐怖癖』と言うらしい。
人間誰でも高い所は落ちる恐怖があれば正常にいられない。

でも私は『高所恐怖癖』じゃない。
この前は本当に気分が悪くなったし、今でも高い所にいると恐怖に陥る。

だから、私は改めて自分の気持ちを主張する。

「そうじゃありません!本当に無理なんです!あと、勝負もしません」

そう言って私は再び誠也さんの手を払うとするも、誠也さんは相変わらず力が強い。
再び私は誠也さんの手に噛みついてみても、『もうそんな攻撃は聞かないよ』と言うように、誠也さんは笑顔を見せてくる。

本当に腹が立つ誠也さん。

と言うかさっきから苛立ちが募って、イライラする。
このふざけた男に一泡噴かせる方法はないのかな?

そうやって田中誠也と言う『悪魔』を退治する方法を考えていたけど、誠也さんには私の思考はただ漏れ。

目の前のアトラクションを指差して、私に提案してくる。
「じゃあこの『shoot a shark』と言うアトラクションで勝負。俺が負けたら、今日の俺への苛立ちをぶつけてもいい。何でも空ちゃんの言うことを聞くよ」

その言葉には興味があった。
単に誠也さんに復讐してやるチャンスだと思ったから。

でもやっぱり負けたときの事を気にしたら、素直に頷けない私。

「でも私が負けたら、やっぱりジェットコースターに乗るのですよね?」

誠也さんはまたふざけた笑顔を見せて答える。

「もちろん。早く空ちゃんの泣きそうな顔を拝みたいからね」

この人はどこまで悪魔なんだと、私はため息を吐く。
私はただ、パレードとか楽しみたいだけのに・・・・。

そんな私を見た誠也さんは急に私の手を離すと、頭を撫でてくれる。

そして突然優しく微笑んで、力の出る言葉を掛けてくれる。