今から丁度一ヶ月前の話だ。

目を輝かせる北條さんと小坂さんの後を追っていった、七月後半の夏休みのこと・・。

北條さんと小坂さんはよくここに来ているらしく、『年間パスポート』を持っていた。
園内のスポットやアトラクションについて詳しいから、私を様々なアトラクションに乗せてくれたけど・・・・。

・・・・・・。

私、今まで生きてきて知らなかったけど、高いところが苦手みたい。
まるで今の誠也さんのように、『空中ブランコ』と言う高い位置で回転するアトラクションに二人に無理矢理乗らされた私・・・。

そして気が遠くなるほど高いところに飛ばされた。
と言うか実際少し気が飛んでいたっけ・・・・・・。

高所恐怖症。

高い所にいるだけで凄く不安になって動くなってしまう症状のことだ。
多分一度は誰もが聞いたことのある症状。

その症状と思われる私は本当に動けなかった。
空中ブランコから降りた後も、ずっと吐き気が襲ってきて何も出来なかった。

私、二人に心配されながらずっとベンチに横たわっていたっけ。
楽しい時間のはずなのに、ずっと側に北條さんと小坂さんは近くに居てくれたっけ。

・・・・・・・。

そう言えばあの時の二人、ずっと私に謝ってくれた。
二人とも、ずっと私に頭を下げていたっけ・・・・。

一方の私は・・・・・まだ二人にあの時のこと、謝ってなかったな。

と言うか、今さら謝っても許してくれるのかな?

・・・・・・。
私の空中ブランコで受けた傷が回復した頃には、ジェットコースターやバイキング等の乗り物避け、パレードや室内の高さを感じないアトラクションで楽しんだ。

そしてその日は三人で夜遅くまで遊んだから、本当に楽しかったっけ。

同時に『二人の優しさ』を確認できた日だと私は思い出した。
北條さんと小坂さん、ずっと優しい笑顔で私と接してくれたし、二人の笑顔はある意味私の『宝物』だし。

だから今日も、そのパレードや高さを感じないアトラクションで遊びたかったから、私は誠也さんに『遊園地に行きたい』と言った。
今日は誠也さんには高さを感じるアトラクションには乗りたくないと事前に説明したんだけど・・・・。

目の前の田中誠也は、また意味のわからないことを言ってくる。