「寿司屋さんとか料理人になったのも、本当は『女の子にモテたいから』じゃないですか?」

私の言葉に誠也さんのお母さんは笑い始めた。
どうやら誠也さんの『女好き問題』は、誠也さんの家族内でも大きな課題らしい。

「あはは!空ちゃん、中々面白いこと言うわね。昔からよくいろんな女を家に連れて来てたし。タイプでも好きでもないのにさ」

一方の誠也さんは何故だか納得して頷いている。
そしてまた私の恋心を傷付ける、ふざけた事を言ってくる。

「本音を言えばそうだね。料理人になってからモテるし。おかげで空ちゃん以外にも、色んな女の子と手を繋げたし」

空ちゃん以外にも。
その言葉が本当だったら私、なんでこんな馬鹿な男の事を好きになってしまったんだろう・・・・・。

本当にこう言う誠也さんは嫌いだ。

いや、もう本当に大嫌い!

「せ、誠也さん!ばか!もう大嫌いです!」

私の怒りの声に、誠也さんは苦笑い。

「冗談だって。本当に空ちゃんは何でも信じるから可愛いよね」

「うるさいです!」

いつの間にかまたしても顔が赤く染まる私。
誠也さんのお母さんも、私の反応を見てまた笑っている。

もう絶対に誠也さんを許さない。誠也さんのばか。

後で絶対に仕返しをしてやる・・・・。

「ゆっくりしていってね、空ちゃん」

誠也さんのお母さんはそう言って私の肩を叩くと、キッチンの方へ戻っていく。
先程の女性が頼んだオーダーが待っているようだ。

「よし!食べよう。母さんが作った料理は世界一だからさ」

「は、はい!」

私は目の前の料理を確認。

美味しそうなカルボナーラと言う卵と生クリームのパスタに、真っ赤なトマトソースのマルゲリータと言うピザ。
それと私が好きなチーズを使ったリゾットと言うイタリアの米料理の計三品。

こんなに食べれるか不安になったけど、私と違って誠也さんはかなり食べれるみたいだ。
お母さんが作った料理を美味しそうに食べている。

なんだか凄く幸せそうな誠也さん。

私も誠也さんのお母さんが作ってくれた料理を食べてみると、スッゴく美味しかった。食べた事のない料理に感動して『美味しい』と何度もつぶやいていた。

同時に自然と私から笑顔が溢れていた。

お父さんが昔に教えてくれた、『どんな辛いときでも美味しいものを食べたら元気に笑顔になる』って言葉を思い出しながら、私は料理を食べていく。お昼ご飯を完食した私と誠也さんは、真奈美さんに外まで見送られ、新しい目的地に向かう。

ちなみにお店には誠也さんの車もあるから、ここからは車で移動だ。
車で移動時間中も、誠也さんと楽しく会話を交わす。

でもまたからかわれたっけ。

本当に悔しい・・・・。