我慢の限界を迎えた私は『目の前で笑う田中誠也を殴ってやる』と思いながら拳を作った。

前々から思っていたけど、『この田中誠也は一回本当に殴ってやらないといけない』と思うし。

それに田中誠也なら殴っても大丈夫だろうし。
一度でいいから『誠也さんの慌てた顔』も見てみたいし。

・・・・・・。

でも私はお腹を空かしたただの子供。
目の前に再び大好物のお寿司を置かれたら、怒りなんて簡単に何処かに消えてしまう。

まるで、お腹を空かしたペットが餌を与えて静かになるように。

・・・・・・・。

ごめんなさい、誠也さん。

「・・・・・食べてもいいですか?」

「だめ。俺に声を出して謝るまで食べるのは禁止。聞いていればさっきから俺のことをバカにしてくるし。それに『私も浮気ぐらい出来る?』本気で言っているの?俺が許すとでも思っているの?」

「うう・・・・」

浮気は言い過ぎました。
ってか浮気なんてしたら、誠也さんは全力で止めてくるだろうと思うし。

もし本当に浮気をしたら、本気で私を怒ってくるだろうし。
私を許してくれないだろうし。

ってか誠也さん、性格悪すぎる。
本当にバカにしているは誠也さんの方だし。

ってか私、本当はただただ誠也さんのことが好きなだけなのに。

一応、私と付き合っているはずなのに。

・・・・・・・・・。

ばーか。

もう知らない。

「・・・・サイコパス誠也さん」

謝るどころか、小さな声で心の声を呟いてしまう私。

ってか謝りたくないのが私の本音だ。
だってここで負けたくないし。

田中誠也に負けたくないし。

でも・・・・・・。

「なんか言った?まあ俺は『空ちゃんのことしか考えていないサイコパス』だけど。次はどうやって空ちゃんを困らせてやろうかな?お客さんとデートの約束でもしてやろうかな?」

「ごめんなさい。今日のお店、手伝わせてください」

サイコパスな誠也さんの発言に私はそう言ってすぐに頭を下げた。
『許して欲しい』のと、『お詫びとして今日の夜の営業も手伝わせて欲しい』とお願いをする私。

最近忙しくて人手が足りないみたいだし。

ってか『誠也さんが私以外の他の女とデート』とか、絶対に嫌だし。
私以外の女の人と一緒に歩くなんて絶対に耐えられないし。

普通にショックだし。
私、落ち込んじゃうし・・・・。

でも本当の誠也さんは、私のことしか考えていない、とても優しい人。

私が素直になれば、誠也さんも素直な言葉を返してくれる。